誰も知らない国を売る-ユーラシア旅行社のツアーGP受賞商品

ヨーロッパロシアの6共和国で特別賞
再受賞の上野氏「旅行会社の原点回帰」

世界遺産に登録されているカザン・クレムリンのクル・シャーリフ・モスク(写真提供:ユーラシア旅行社)  日本旅行業協会(JATA)がこのほど主催した「ツアーグランプリ2019」では、11の旅行商品が賞を獲得したが、そのなかでもデスティネーション開拓の観点において一際異彩を放っていたのが、海外旅行部門の審査員特別賞を受賞したユーラシア旅行社の「ロシア小さな6つの共和国」だ。ロシア連邦中央部の沿ヴォルガ連邦管区に属するすべての共和国を訪れ、独自の文化や歴史に触れる10日間のツアーで、タタールスタン、マリ・エル、チュヴァシ、モルドヴィア、バシコルトスタン、ウドムルトと聞き慣れない国名がずらりと並ぶ。

 審査員に「同社しか取り扱っていない国が数々登場し、なるべく沢山の国に行きたいという市場にも受け入れられる可能性のある、会社の個性が出た独自性の高い旅」と評価されたツアーの企画と造成を担当したのは、第二企画旅行部課長の上野宏氏。「ツアーグランプリ」での受賞は、2012年の「アルバニアとマケドニア、バルカン半島探訪 8日間」による審査員特別賞に続き2回目という上野氏に、業界の環境が急激に変化するなか、極めて知名度の低いデスティネーションを積極的に販売し続けることの意義などについて聞いた。

-まずはこれまでのご経歴についてお聞かせください

上野氏 上野宏氏(以下敬称略)ユーラシア旅行社には1999年に入社しました。それ以前は旅行業界とは全く縁がなく、研究者から塾の講師になり、経営にも携わっていましたが、色々とうまく行かなくなって新たな職を探していたところに、新聞でこの会社の求人広告を見つけました。旅行業に特段の関心があったわけではありませんでした。

 入社後は中南米、アフリカ、中近東、インド・ネパール、東欧などを担当し、最近はロシアなどを担当しています。ロシアを含む旧東側諸国は、通算では10年ほど経験しています。

-今回の受賞商品のポイントや、商品化のきっかけについて教えてください

上野 商品タイトルにもあるように、10日間でロシア連邦の6つの共和国を巡るのがポイントで、タタールスタン、マリ・エル、チュヴァシ、モルドヴィア、バシコルトスタン、ウドムルトに加えて、レーニンの生地として知られるウリヤノフスク州のウリヤノフスクを訪れます。こだわったのは、各共和国に最低1泊は宿泊することと、これらの国の世界遺産をすべて訪れることです。

 当社には以前から、小さな国々だけを巡るツアー商品があり、例えば2013年に発売した「欧州小さな国々 夢紀行」では、リヒテンシュタイン、サンマリノ、バチカン、モナコ、アンドラ、自称独立国のセボルガ公国などのミニ国家ばかりを巡って好評を得ています。しかし催行本数がひと頃ほどではなくなってきたので、「連邦内に沢山の国があるロシアでも同じことをできないか」と考えたのが、そもそもの始まりです。

 当社は外務省の海外安全情報でレベル2以上が発出されている地域を除けば、ほぼすべての方面へのツアーを発売していますが、ロシア連邦内については未開拓でした。また、昨年にはJATAの研修旅行に参加してタタールスタンの首都のカザンを視察し、旅行者を惹きつける魅力を確信できたので、商品化を決めました。