週間ランキング、1位はANAの座席指定有料化-旅行会社はそんなに「ブラック」なのか
[総評] 今週の1位は、全日空(NH)が一部の条件について座席指定を有料化することをお伝えした記事でした。2位には同じくNHがNDCへの対応を決めた記事が入っており、同社の動きに注目が集まった1週間といえます。
座席指定については、諸外国では一般的になっている印象で、実際に私も先週の出張で往路便について通路側、復路便は非常口前の足元の広い席を購入しました。LCCの浸透もありますし、日本でも必然の流れなのかなとは思いますが、一方ではFSC(フルサービスキャリア)とはなんなのかという疑問がまた頭に浮かんできます。
もともとはあれこれサービスをなくしたり切り売り(アンシラリー販売)することで運賃を引き下げるLCCと、それに対してレガシーキャリアは機内食や毛布などなどのフルサービスが提供されるからFSCだったと思うのですが、最近はアンシラリーの話題はむしろFSCからばかり聞こえてきますし、もはや「フルサービス(もできる)キャリア」ということなのでしょうか。(だとすれば当てはまるLCCもありそうですが。)
ただ、他社の有料座席指定の詳細を知らないためNHが特別なのかわかりませんが、上述の往路で私が指定することとなった機体後方の座席については、NHでは通路側、窓側とも引き続き無料で指定可能ということで完全に振り切ってはなく、どういう事情が取材できていませんが、この点はFSCらしさが残ったと言えそうです。
そして、完全に振り切らないという意味ではNDCも同様といっていいでしょう。スターアライアンスの盟友であるルフトハンザ・グループを含め欧米各社は「アメとムチ」、英語でいえば「carrot and stick」のアプローチで積極的に推進しているところですが、NHはそろそろと手探りの様子です。日本航空(JL)も「もう少し慎重に検討」する意向で、サービス開始は当然まだ先です。両社が日本でNDCの活用方針を明確にするころには、欧米でまた別の動きが本格化していそうな気がしますがそんなことはないでしょうか。
ちなみに、このような「時差」はコミッションカットにせよ何にせよ常にある話ですが、最近海外の業界誌で気になる記事を見つけました。なにかというと、米系航空会社が旅客輸送事業で支払っているコミッション額はこの3年で実は増えているというものです(といっても1990年代の5分の1程度ですが)。同じ情報ソースからFSC大手3社を抜粋して作成した表が下記のものですが、皆様はどのようにご覧になるでしょうか。
日本では最近ますます締め付ける方向に動いているようですが、「時差」を考えると数年後には上のグラフと同じような動きをたどるかもしれません。もちろん、だからといってすべての旅行会社に満遍なく、というものでもないでしょうけれども。
なお、TBSで「わたし、定時で帰ります。」なるドラマが始まりました。公式サイトによると「主人公・東山結衣(吉高由里子)はWEB制作会社で働くディレクター。過去のトラウマから入社以来、残業ゼロ生活を貫いてきた。理由が無ければ帰りづらい風潮の中で、仕事中は誰よりも効率を追求し…」というような設定なのですが、たまたま放送を観ていたところ、なんとその過去のトラウマは新卒で入社した「けっこう大手の旅行代理店」でのこと。
「(内定をもらって)家族からも周りからもすごいねと言われたけれども、そんなに楽ではなかった。先輩たちも忙しそうで、誰も何も教えてくれないし、すぐ怒鳴る」「月100時間以上残業、休みもなし」「病気か怪我でもしないかなと思ったら、入社後半年で仕事中階段から落ちて頭を打って入院」というようなエピソードが語られ、どこをイメージしたのか知りませんがずいぶんな言われようです。
長時間労働など課題がないとはもちろん言いませんが、これで放映して問題ないだろうと思われる程度には「ブラック」な業界と認識されていることにショックを受けるとともに、日本旅行業協会(JATA)あたりが抗議するかと思いきやまったくの無風で、残念でなりません。(松本)