豪州、路線増で国全体に期待感、周遊やセルフドライブに可能性も
南とタスマニアでも活動強化の兆し
さらなる路線拡充に期待も
高森健司氏(日本局長)
ビクトリア州への18年の日本人訪問者数は6.6%増の8万4700人。高森氏は「2桁とはいかないまでも8%から9%増をめざしたい」としつつ、レジャー需要の伸びも続いており順調な状況と評価した。今後も引き続き直行便の維持と座席数の増加を最優先する考えで、直行便のプロモーションや旅行会社による商品造成の促進に取り組んでいく。
今年の新プロダクトとしては、ペンギンパレードの新ビジターセンターが稼働するほか、ウィルソンズ岬でイルカやオットセイ、そして東京ドーム2倍ほどの巨大な穴が開く「スカルロック」などを見て回るデイクルーズが運航開始。また、フライ&ドライブのプロモーションにも着手する方針で、すでに旅行会社向けのFAMツアーを実施したほか、メディア露出もはかる。5年程度の長期スパンで取り組んでいくという。
このほか、西日本での活動も強化。直行便がなかったため需要を獲得できていなかったグループマーケットも、インセンティブを核として取り込みもめざす。20年から21年にかけて、高価格帯のブランドを中心に11軒の新ホテル開業が予定されている点も有効に活用する。なお、ニッチマーケットではあるが1月に独占公演として始まった演劇「ハリーポッターと呪いの子」も、全編英語で字幕がないなどハードルはあるものの、ファンの需要獲得に向け予算を投下していくという。
中村滋氏(日本事務所トラベルトレードマーケティング担当ディレクター)
ノーザンテリトリーでは、今年10月26日に登山が完全に禁止となるウルルへの駆け込み需要が継続。17年11月に発表された後、18年は1年を通じて訪問者が増加を続け通年では56%増の3万5000人となった。うち休暇での訪問は3万2000人で前年から61%増。さらに、地域別で見てもウルルは70%増の3万人となった。
中村氏はこうした状況について「先にある需要を摘み取っている感覚」と懸念を示すとともに、そもそもオフシーズンでもある11月から3月までは需要が減少すると予想。一方で、「もともと登ることを目的とした割合はそう多くなかった。登れなくなることで人気が下がったり、代表的アイコンとしての位置が失われることはない」とし、極端な落ち込みも想定していないと語った。
今後の活動では、登山禁止以降も変わらないウルルの魅力をアピールしていくほか、ダーウィンやカカドゥ国立公園、トップエンドへの需要喚起も継続する。なお、18年のダーウィンへの日本人訪問者数は12%増となったといい、中村氏はこれまでの地道な活動が奏功してきていると手応えを語った。
ヴィヴィアン・リー氏(東半球担当マネージャー)
南オーストラリア州への日本人旅行者数は過去12ヶ月間で14%増の9000人となり、さらに旅行による経済効果のなかでの国別シェアは30%に到達。日本事務所の開設など直接的な活動は長くしてきていないが、そうしたなかでの順調な推移を歓迎。7月以降の新会計年度について、予算増もあり得るという。
リー氏は、日本人旅行者が自然などオーストラリアならではの体験を重視する傾向にある点が南オーストラリア州の強みと合致すると説明。昨年末には初めて日本語のブローシャーを作成し、さらに今年2月から4月にかけては日本市場で初めてシンガポール航空(SQ)と共同のプロモーションを実施するなど活動を強化してきていることを紹介した。SQとのプロモーションについては「反響は好調」という。
今後もTAの活動と連動したアプローチを継続しつつ、例えばメルボルン線との接続で「メルボルン+アデレード」や「メルボルン+カンガルー島」など新しい提案もしていきたい考え。
アナベル・スウィートマン氏(グローバルマーケティングマネージャー)
タスマニア州も南オーストラリアと同じく日本事務所は設置しておらず、活動はTAと共同でのメディア露出などに限定されてきたが、スウィートマン氏は「興味は持ち続けている。日豪路線の座席供給量拡大に合わせてタスマニアへの訪問者も増やしていきたい」と強調。そのうえで、昨年はシドニー在住の日系旅行会社と航空会社の幹部5名を招待したことを明かし、日本市場への取り組みを強化する姿勢を示した。
特に、1日あたりメルボルン線で17便、シドニーで11便という接続の良さを活かしたい考えで、「意欲のあるパートナーと組んで、共同キャンペーンの可能性などについて協議を続ける」という。
また、州としては「ファーストタイムデスティネーション」としてのポジションもめざしたいといい、「日本ではすぐには難しいと思う」としつつも、シャンパーニュ地方と同様の寒冷な気候に恵まれているというスパークリングワインやウィスキー、あるいは自然、ワイルドライフなどをコンパクトに体験できる強みをアピールしていく方針だ。