「登るウルルから観るウルル」、エアーズロック登山禁止も心配無用

17年の旅行目的、「登山」は17%
正しい情報発信で真の魅力アピールを


▽「登山ありき」は日本の旅行会社だけ?現地は影響懸念せず

「フィールド・オブ・ライト」も人気のアトラクション

 こうした魅力ある「ウルル=カタ・ジュタ国立公園」、あるいはダーウィン、アリススプリングスなども擁するノーザンテリトリー準州を今後いかに販売していくか。ひとつ重要なことは、登山がないと売れない、という固定概念から離れることだろう。

 オペレーターとして現地の最大シェアを誇るAATキングスでマネージャーを務める永瀬篤史氏によると、確かに昨年11月に登山禁止が決まってからそれを目的とした日本人旅行者は大きく増えているものの、それでも来訪理由を聞いたアンケートで登山を選んだのは全体の30%程度。しかも、昨年の1年間で見てみると登山を理由として選んだのは17%のみであり、「世界遺産」の32%、「自然体感」の23%、「憧れ」の22%を下回っている。

アリススプリングスのレプタイルセンター。悲鳴を上げつつ爬虫類に触れる体験は、チームビルディングの効果も大

 また、登山口が開く確率が3割程度であるにも関わらずノーザンテリトリー準州への日本人訪問者数が2万人程度を維持し続けていることも、登山の可否が需要を左右するものではないことを表しているといえる。こうした状況からも永瀬氏は、2019年10月の登山禁止以降について「最初は少し需要が落ちるかもしれないが、すぐに元に戻るはず」と予測する。

アデレードとダーウィンを結ぶ「ザ・ガン」が停車するアリススプリングス駅。時が止まったような雰囲気で、鉄道好き、写真好きには心躍る場所だろう

 そもそもAATキングスに限らず現地側は、10年以上前から脱登山の取り組みをしてきたもののなかなか旅行会社に浸透しなかったのが実情で、その意味では登山口の閉鎖が決まって良かったというのが本音かもしれない。永瀬氏も、これからは「登るウルルから観るウルル、自然を体感するウルルへ(と変わっていく)」と期待を寄せていた。

 確かに、取材に応じてくださったJTBのお客様は「登ってほしくないと思われていることは看板で知った」と話されたうえで、「日本人も、例えば日本が占領されたとして伊勢神宮など(の不可侵の領域)を勝手に観光されたら嫌だろう」と思いやり、今回は気温の上昇が理由で登山できなかったものの、できなかったこと自体をむしろ肯定的に捉えられていた。他人にされて嫌なことは自分もしない――述べるまでもなくこれは人間関係の基本であり、人の交流の創出を生業とする旅行会社は特に忘れてはならない視点だ。

しばらく閉鎖していたエアーズロックリゾート内の「ザ・ロスト・キャメル・ホテル」。高需要に応えてリノベーションを経て営業再開

 エアーズロックリゾート内にある5軒の宿泊施設は軒並み90%以上の稼働率がずっと続いているといい、諸外国からの需要はそもそも登山にスポットライトを当てずとも好調に推移している。登山禁止を嘆き続けるのか、それとも観光のあるべき姿に方向転換する好機と捉えるのか、選ぶべき道は自明だろう。登山禁止と聞いて訪問すらできなくなると誤解する消費者もいるらしく、そういった意味でも正しい情報の収集と発信こそが旅行会社の大きな役割となる。

 今回の取材では、JTBがオーストラリアへのグローバルデスティネーションキャンペーンの一環で実施したチャーター便に搭乗した。日本航空(JL)の機材で成田からアリススプリングスへ移動し、そこからはチャーター専用航空会社のアライアンス航空(QQ)でエアーズロック空港に入った。

 QQは、JTBが同キャンペーンの目玉企画として独占契約した相手先で、3年間に渡ってオーストラリアの国内でJTBの顧客を運ぶことが決まっている。QQ便内ではにこやかな客室乗務員が出迎えてくれ、1時間未満のフライトでも水のボトルが用意されるなどサービスも充実。また、機内アナウンスでも英語の後に日本語が流され、非常に快適に過ごすことができた。

 QQ便は今後も、QQ便は今後も、例えばゴールデンウィークにハミルトン島とエアーズロックを結ぶルックJTBの特別ツアーなどで活躍の予定だ。
取材協力:JTB、オーストラリア政府観光局