WIT2018開催、伝統と新技術の組み合わせを-OTA各社が議論
オンライン旅行業界の国際会議「Web in Travel(WIT)Japan & North Asia 2018」が6月28日と29日、東京で開催された。7回目を迎える今回は「Better Travel」をテーマに、オンライン旅行市場や旅行業界におけるテクノロジーの活用などについて、講演やパネルディスカッションを実施。29日の会議の冒頭に登壇したWIT創設者のイェオ・シュウ・フーン氏は、「旅行業界は歴史ある業界だが、近年さまざまなアイデアが生まれ、新しいプレイヤーが参入してきた」と現状を説明し、「オフラインとオンライン、伝統と新たなイノベーションを組み合わせることが『Better Travel』を約束する」と強調した。
同氏はフォーカスライトが1月に発表した、アジア太平洋地域のオンライン旅行に関する調査を引用し、オンライン旅行市場の動向を説明。同市場の予約流通額は2015年は1110億米ドルだったところ17年は1460億米ドルとなり、21年には2380億米ドルになる見通しという。旅行市場全体で占める割合としては、15年は31%、17年は38%で、21年には48%への拡大を見込む。
さらに、同氏はオンライン市場に占めるOTA経由と、サプライヤーの直販の予約流通額の比率を紹介。17年はOTAが46%、サプライヤーが54%で、21年はOTAが47%、サプライヤーが53%になる見込みという。
OTAについては、同日にJTB、じゃらん、楽天トラベル、エクスペディア、トリップアドバイザーが、「Best of Both Worlds: An OTA Exchange」と題したパネルディスカッションを実施した。ディスカッションでは、JTB個人事業本部Web販売部戦略統括部長の三島健氏が、デジタル技術とデータを活用する必要性を訴えた。モデレーターを務めた、ベンチャーリパブリックCEOの柴田啓氏による「自分がCEOだとしたら何に取り組むか」という質問に対し、「オフラインの事業でもオンラインのマインドで取り組むべき」と主張した。
同氏は、Amazonがこのほど、リアル店舗のコンビニ「Amazon Go」の本格展開を開始したことについて、「オンライン企業のAmazonが顧客の店舗での行動をデジタル領域で管理する取り組み」とコメント。こうした動きを受け、JTBの各店舗でも「感覚でなく、数字を見て検証することを習慣にすべき」と強調した。
また、リクルートライフスタイルエグゼクティブ・マネージャーの宮本賢一郎氏は、このほど宿泊施設向けの新サービスとして、消費者からの宿泊施設への質問にAIがチャットで回答する「トリップAIコンシェルジュ」サービスを開始したことを紹介。「(宿泊施設への)業務支援に注力し、今後もAIを活用していきたい」と話した。
エクスペディア・ロッジング・パートナー・サービス(LPS)日本・ミクロネシア地区統括本部長のマイケル・ダイクス氏は、レベニューマネージメントにおけるテクノロジーの活用について言及。「小規模なホテルはITリテラシーがあまり高くない。グローバルスタンダードのホテルのように、収益管理のためにAIなどのテクノロジーを活用すべきでは」と提案した。
このほか、楽天トラベル事業長の高野芳行氏(※高ははしご高)は、楽天グループの有するデータを活用し、楽天トラベルの利用者と似た消費行動を取るユーザーにマーケティングを実施していることを紹介した。トリップアドバイザー代表取締役の牧野友衛氏は、ローカライーションにより、各地域のユーザーの獲得に引き続き取り組む考えを説明した。