旅行業の新しい潮流 ファンが認定、神社の“聖地化”(2) アニメや“嵐”も―ものがたりが人を動かす

 もともと神社は聖地だが顕著化させたのは女性とアニメファン。アニメの舞台をめぐる「聖地巡礼」の火付け役は「らき☆すた」の埼玉県鷲宮市にある「鷲宮神社」。にわかに若者が訪れるようになり何も知らなかった地元が驚いたという逸話は今も語り草。大ヒットしたアニメ映画の「君の名は。」で新宿や高山の神社が脚光を浴びたのも記憶に新しい。

 女性は縁結びなど願掛けにとどまらない。滋賀県栗東市の小さな歴史ある神社が数年前からアイドルグループ・嵐の聖地として年間20万人の嵐ファンが日本全国から訪れている。神社の名は、こんぜの里総社「大野神社」。菅原道真公を祭神とし、国の重要文化財に指定されている楼門は鎌倉時代初期の建立といわれ、滋賀県内の楼門としては最も古い。

 なぜ嵐の聖地になったのか。以前からメンバーの大野智さんと同じ名前の神社であることから、参拝する嵐ファンはいたそうだが、チラホラだった。しかし大野神社に大宮聰と書いて「おおの・さとし」と読む禰宜がいたことがファンに発覚。しかも禰宜の苗字が大野智さんと二宮和也さんのユニット「大宮SK」とも一致していることから、ファンに拡散するという事態になった。

 関西には大野神社をはじめ二宮、松本、饗庭(相葉)の名がつく神社があり、嵐ゆかりの神社めぐりが可能だそうだ。

 嵐ゆかりと言えば、日本航空のコマーシャルに登場した福岡県福津市の「宮地嶽神社」。CMには神社の名前は出ていないが、夕陽が参道に映える光の道やロケーションから広まったという。

 いずれの神社も、神社側からではなく、ファンが勝手に聖地として認めたものばかり。

 旅行会社が造るツアーには由緒正しい寺や神社などが組み込まれていることが多いが、そこにどんな「ものがたり」が潜んでいるのか。それを示すことで、市場の創造につながる。前述した大野神社はファンが作り出した聖地(観光地)だが、ちゃっかりとバスツアーに組み込んでいる旅行会社もある。脱帽したい。

(トラベルニュースat 18年3月25日号)


情報提供:トラベルニュース社