週間ランキング、新たな「成田縛り」の予感?-民泊解禁へ準備始まる
[総評] 今週の1位は、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)日本・韓国支社長のドナルド・ブンケンブルク氏による戦略説明についての記事でした。少なくとも18年の夏と冬には成田線の復活はないと断言されているもので、とても潔いというか分かりやすいというか、成田空港の滑走路増設の記事が4位に入っていることと合わせて、日本の玄関口について考えさせられるランキングとなっています。
以前は、羽田に飛びたければ成田路線も維持せよといういわゆる「成田縛り」が各国との航空交渉の場で不文律的に課されていたそうですが、ヴァージン・アトランティック航空(VS)が15年に撤退して以降はほぼ形骸化している様子です。(この辺りの経緯にご興味のある方は、Googleなどで「成田縛り」を検索するだけで関連する情報がたくさん出てきます。)
そうしたなかで気になったのは「本社には常に成田の話をして、忘れられないようにしている」というブンケンブルク氏のお言葉で、一体誰に何の配慮をしているのか、という話です。日本語化の問題もあるかもしれませんが、「忘れられないように」ということは「放っておくと忘れられる」ことを意味するわけで、LHの本社がそうであれば本来ブンケンブルク氏もお立場としては忘れてしまって構わないはずです。
一方、6位のフィンエアー(AY)の記事でも社長兼CEOのペッカ・ヴァウラモ氏が話された羽田への思いをご紹介していますが、どの航空会社もこれから羽田と成田の両方に飛べるならば羽田を選びたいというのが基本的には本音でしょう。
これらを勘案すると、ブンケンブルク氏のご発言は20年までに予定される羽田国際線の発着枠増加を見据えたアピールである可能性もあります。例えばAYは、羽田枠の獲得レースのなかで成田から1日2便を運航する貢献度を強く主張していくでしょう。成田の第3滑走路が現実味を帯びつつ、ドル箱といわれる羽田の増枠も間近に迫るなかで、もしかするとすでに新しい、というか改めての「成田縛り」が警戒されているのかもしれません。
また、今週のトピックでいうと、15日に始まった民泊物件の事前受付も観光産業全体にとって大きなマイルストーンとなるでしょう。民泊は英語では「Alternative Accommodation」、つまり「代替宿泊施設」という名称で区分されていますが、一方ではAirbnbはホテルの取り扱いに本腰を入れはじめているところで、先日も書いた通り今後は「泊まるところ」の大きなくくりのなかで、宿泊施設カテゴリの境目がぼやけていくように思います。
ここで一つあえて書いておきたいのは、記事はランキングに入りませんでしたが、Airbnbが14日に発表した「住宅宿泊事業法(民泊新法)が6月15日に施行されて以降は違法物件を排除する」という方針についてです(リンク)。
何が言いたいかというと、こんなことは当たり前の話であって、むしろ当初は「部屋を貸すホストは法令に基いて運営するように求めている」と主張しつつも、実際には得られる収入の大きさや登録の簡単さ、リスクの少なさなど旨味ばかりをアピールし、実際に法を守らせようとする仕組みは見えにくい、という二枚舌的スタンスであったことを忘れて良いのかという点です。
今回の記者会見でも言いたいことだけ言って、現状で違法物件がいくつあって新法施行後に何件離脱すると予想しているのか、という疑問には答えていません。
どうも、Airbnbもそうですが、インターネットを主戦場とするスタートアップ各社は、グレーゾーンにためらうどころか「行っとけやっとけ」といった風に飛び込んで大きな儲けを手にし、汚れた部分は後から覆い隠せばいいと思っている、あるいは切り捨ててそもそもなかったかのように振る舞っていくのが正しい筋道だと思っているような印象を受けます。
今や、引越しシーズンであることもあってかテレビCMを目にしない日はないほどの「メルカリ」も、本来は受けるべき資金決済法の規制を逃れて急成長したのではないかと指摘されてきており、一般報道などによると現在は関係省庁との調整が進んで問題もクリアされようとしているとのことですが、なんというか、法を守る方がバカを見る世界というのはいかがなものでしょうか。
もちろん、本当は大義名分やルールに縛られて成長できないのでは元も子もないわけで、そういったベンチャーの思い切りが実は現代の経済を牽引しているともいえるかもしれません。また、純粋に消費者が求めているのはなにか、という話もあるでしょう。このあたりは成田と羽田に通じる部分もあるような気もします。
しかし、こんなことを書くのは心が狭いのか、それとも「武士は食わねど高楊枝」的な発想が時代遅れなのかわかりませんが、それでもやはり対等な条件で競争できること、イコールフッティングを確保することは大原則なのではないかと考えてしまいます。(松本)
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