農協観光や百戦錬磨が新団体、「農泊」本格的に推進
農協観光や百戦錬磨などは2月7日、新たな一般社団法人として「日本ファームステイ協会」を発足し、記者会見を開催した。農林水産省が推進する、旅行者が農山漁村に滞在する「農泊」や、田園地帯などでの「ファームステイ」を促進して、地域の活性化をめざす団体で、具体的には農家などの農泊事業者による宿泊者の受け入れや人材育成などを支援する。4月から事業を開始し、初年度は農泊事業者と旅行会社など支援事業者とのマッチングサービスを中心に展開する方針。2社に加えて全国農協観光協会と時事通信社が発起人を務める。
会長理事を務める鳥取県知事の平井伸治氏は記者会見で「地方は宿泊施設のキャパシティに限度がある」と述べた上で、農泊促進の必要性を強調。6月に住宅宿泊事業法案(民泊新法)が施行されることにも触れた上で「都市型民泊ではなく、地方型や体験交流型の民泊にも光を当てていけば、従来の旅館やホテルとは異なる需要の開拓につながる。増加する訪日需要にも応えていけるのでは」と意欲を示した。
理事を務める農協観光代表取締役社長の藤本隆明氏は「農協(JA)には農泊に積極的に取り組もうとしている会員が多い。JAグループ各社と連動して取り組みを進め、地域活性化につなげていきたい」と抱負を語った。顧問に就任した日本観光振興協会(日観振)理事長の久保成人氏は「日本人の旅行はなかなか長期化しないが、農泊の普及が国内でのロングステイの後押しになるのでは」と述べた。
代表理事を務める百戦錬磨代表取締役社長の上山康博氏は、観光庁の調査によれば2016年に農泊を体験した訪日外国人は全体の6.9%にあたる約165万人だった一方、「次回の旅行でしたいこと」を尋ねた質問では16.2%が農泊を希望した事を説明。「20年までに訪日外国人の20%から30%に農泊を経験してもらいたい」と目標を述べた。ちなみに、教育旅行などで農泊を経験する日本人は年間約12万人にとどまるという。
上山氏によれば、日本国内には現在、農山漁村滞在型旅行をビジネスとして実施できる「農泊地域」が約400存在。政府は20年までにその数を500にまで増やす目標を掲げており、協会も達成に向けて取り組むという。上山氏は農泊事業者の減少や訪日客の受入ノウハウの不足などの課題があることなどについて述べた上で、今後は農泊事業者と旅行会社、交通事業者、外食関連事業者、コンサルティング会社などのさらなるマッチングが必要となる旨を語った。
同協会では、まずは農泊事業者を「正会員」、支援事業者を「賛助会員」として、それぞれ50社・団体程度の加盟を募集。すでに旅行会社など数社から加盟を希望する声が挙がっているという。5月にはシンポジウムを開催してマッチングの場を設けるほか、ファームステイ先進国である欧州などに倣い、施設のサービスや経営状況などに関する品質保証制度も設立する。このほか、情報発信やプロモーション、家主不在の古民家の活用などにも取り組む。
なお、記者会見では内閣官房長官の菅義偉氏と農林水産大臣の齋藤健氏がビデオメッセージで挨拶。菅氏は「農山漁村にある美しい資源、伝統的な生活や文化、食などを活用し、取り組みを全国で進めることが重要」と強調。齋藤氏は「民間企業が集い、地域の課題解決に当たる取り組みは素晴らしい」と歓迎の意を示した。