自治体ツアーなど業法適用外に-地域の旅行会社に影響も
観光庁は7月28日、自治体が関与する夏休みの子供向けツアーや、ボランティア団体などが主催する災害時のボランティアツアーなどについて、旅行業法による規制の適用外とする通知を、各都道府県に発出した。自治体が関与するツアーについては、今夏の子供向けサマーキャンプなどが旅行業法に抵触する可能性があるとして、中止されるケースが相次いでいたところ。国土交通大臣の石井啓一氏は同日の定例会見で、これまでは旅行業法上の取り扱いが不明確であったことを説明した上で、「明確にすることで、寂しい思いをするお子さんがこれ以上出ないよう努めたい」と話した。
今回の通知では、自治体が実質的にツアーの企画や運営に関与しても、営利性や事業性が認められない場合は旅行業法の適用外とした。具体的には、参加者から参加費などを徴収しても利益が出ないこと、ツアーを日常的に継続しないこと、不特定多数に募集をおこなわないことを条件とし、自治体が年に数回実施する独身男女向けの婚活ツアーなども、条件を満たせば適用外とする。観光庁は自治体に対し、ツアーの実施に懸念がある場合などには同庁に確認するよう求めている。
ボランティアツアーについては、緊急性や公益性の高い災害時にボランティア団体やNPO法人、自治体が同ツアーを主催する場合、事前に参加者名簿を被災自治体などに提出すれば、主催団体がツアーの募集や旅行代金の収受をおこなっても旅行業法の適用外とする。名簿の提出により、業法の適用外となる「日常的な接触のある団体内部」での募集と同様の扱いと位置づけるという。ただし、ツアーを主催できる期間については限定し、観光庁が災害の規模や状況に応じて決定した上で、ウェブサイトなどで告知する。
なお、両ツアーの実施については「適用に必要な措置」として、関連法令について確かな知識を持ち、旅行の安全の確保と目的の達成が実現していることを判断できる責任者を置くこと、事故発生時の損害賠償に備えて損害賠償責任保険に加入することなどを示した。
観光庁によれば、旅行業者への影響については「これまでも旅行会社に任せずにやっているケースが多かったため、特に影響はないのでは」とのこと。7月31日午前の時点で、旅行会社からの問い合わせはないという。
▽ANTAは安全確保呼びかけ、JATAも「ルール遵守を」
本誌の取材に対して全国旅行業協会(ANTA)は、今回の通知について「具体的な規模については分からないが、影響がある可能性はある」と懸念を示した。特に自治体が関与するツアーについては「我々の会員には地域密着型の旅行会社が多いので、そのような会社の業務に影響が出るのでは」という。
そのほか、会員各社が旅行業法に基づき、参加者の安全確保に配慮してツアーを催行していることを強調した上で、自治体などのツアーの安全性を懸念。日本旅行業協会(JATA)も「旅は安心・安全が第一であり、(自治体やボランティア団体などには)適正なルールに基づいてツアーを運営して欲しい」とコメントした。
なお、大手旅行各社への電話取材では、「影響についてはよくわからない」「子供向けのサマーキャンプは単価が低く収益性が悪いため、あまり取り扱っていない」「自治体のツアーは非営利なものなので客層が違う」といった声が挙がった。