「危機管理広報」でピンチをチャンスに-JATA経営フォーラムから
講演に加えて模擬訓練を実施
田川会長「ネット時代に即した広報を」
日本旅行業協会(JATA)はこのほど開催した「JATA経営フォーラム2017」で、分科会「経営者のリスクマネジメント『危機管理広報を考える!』-ネガティブ案件における広報対応をグループ討議-」を開催した。他の分科会とは異なり、有識者の講演後には参加者30人強がグループに分かれてバス事故発生時の初動対応に関する模擬訓練を実施するもので、JATA会長の田川博己氏も傍聴。本誌の取材に応えた田川氏は、インターネットが発達した今日における柔軟な広報対応の必要性などについて力説した。分科会の様子を紹介する。
広報次第で会社は存亡の危機に
リスク対策のカギとして重要視を
分科会の司会を務めたJATA広報室長の矢嶋敏朗氏は、冒頭の挨拶で旅行会社の広報を取り巻く環境について「広報の仕事は特殊なものと見られており、経営者は実務について知らないことが多い。会社によってはセミナーや模擬記者会見に取り組んでいるところもあるが、コストの問題で実施できないところも多い」と説明。それらの状況を踏まえて昨夏には、広報担当者向けの「緊急時広報対応セミナー」を開いたことについて述べ、「ご評価をいただいたので、今回の経営フォーラムでも開催することとなった」と語った。
あわせて「昨年の軽井沢での貸切バス事故に際しては『旅行会社が手数料を取るから事故を起こす』といった間違った報道も見られた。そのほかにも、高速バスの事故がなぜか「貸切バスが」と書かれたりして、旅行業界が(事実誤認による)風評被害を被ることがある」と指摘し、アクシデントが発生した際には広報担当者が「2次被害」の防止に努める必要があることを強調。参加者には「広報の重要性を感じていただき、各社の組織の構築に役立てていただきたい」と呼びかけた。
この日の講師は、元安田生命保険取締役広報部長で現在はNPO法人広報駆け込み寺代表の三隅説夫氏と、ピーアール会社のサン・クリエイティブ・パブリシティで取締役コミュニケーション局次長兼危機管理広報担当を務める関内靖氏の2氏。最初に講演をおこなった三隅氏は冒頭で「近年は企業の不祥事や事件が続発しており、広報の役割はますます重要になってきている」と述べた上で、「広報とは経営機能の1つであり、特に危機管理がポイント。広報の対応が下手だと会社は簡単につぶれる」と警鐘を鳴らした。また、基本姿勢として「逃げない、隠さない、嘘をつかないの3つが大事で、日頃から良い情報を発信し続けることが大切」と強調した。
近年の広報業務を取り巻く環境の変化については、インターネットの進歩が大きく関与していることを説明し、「誰もがインターネット上で何かを書き込む、情報を隠せない時代になった」と説明。あわせて予測不可能な事案などにも対応するために、企業の広報は「危機管理力」「情報発信力」「CSR力」などを身に着けて備え、「想定外のことを想定内にしておくこと」がリスク対策につながると語った。
そのほか、メディアに対しては敵視するのではなく「消費者の代表と思うことが大事で、むしろ会見を大いに活用すべき」と主張。記者など対して誠実なコミュニケーションを取ることが、最終的には「ピンチをチャンスに変えることになる」と語り、企業はリスク対策のカギとして、広報担当者を重要視すべきとした。