UNWTOが講演会、リファイ氏など「持続可能な観光を」
国連世界観光機関(UNWTO)駐日事務所は3月15日、1日に国連大学本部ビル内に東京事務所を開設したことを受けて、同ビル内のホールで記念講演会を開催した。テーマは国際連合が2017年の重要課題として啓発活動などに取り組んでいる「持続可能な国際観光年」で、演者は来日したUNWTO事務局長のタレブ・リファイ氏、自由民主党幹事長の二階俊博氏、小西美術工藝社代表取締役社長のデービッド・アトキンソン氏の3氏が務めた。産官学の参加者は合計で約450名に上った。
「持続可能な国際観光年」は、観光産業における環境破壊、文化の毀損、過度な商業化を避けるとともに、観光客の行動規範などを見直すことで、観光地本来の姿を維持しようとする活動。国連が1959年から毎年定めている「国際年」において観光がテーマとして取り上げられたケースとしては、1967年の「国際観光年」、02年の「国際エコツーリズム年」がある。
リファイ氏は講演で、「持続可能な観光」の実現に向けては、環境や文化の安定・維持に加えて、観光産業における雇用の確保や所得水準の上昇なども必要と説明。また、ITの進歩などによる業界を取り巻く環境の変化についても言及し、「ITは既存の観光業者のビジネスモデルを破壊するが、突きつけられる課題には取り組まなくてはいけない」などと語った。
また、観光が持つ政治的な力についても言及し、「観光は平和と安定をもたらすもので、人々をつなぎ、目を開かせ、世界の壁を切り崩す」と主張した。UNWTOは米国政府が1月に発出した中東などの7ヶ国の国民の入国を規制する大統領令に対し、「旅行の自由を侵害する」と非難している。
二階氏は「持続可能な観光と防災」と題した講演で、津波などの自然災害に対する理解を深め、防災への意識を高めることが、観光産業および社会の安定化につながると説明。「しなやかな国づくりをし、世界に発信することが日本の使命」と力説した。アトキンソン氏は、日本の観光大国化に向けて、取り込みが進んでいない欧州からの旅行者を獲得することや、関係省庁による縦割り行政を改善することの重要性を説明。諸外国と同様に「文化スポーツ観光省」を創設すべきと主張した。
そのほか、冒頭で挨拶したUNWTO駐日事務所代表の本保芳明氏は、奈良市を拠点とする駐日事務所がこれまでは関西を中心に活動してきたことについて述べた上で、「これから日本が観光大国をめざすためには、ステークホルダーと緊密な連携を取る必要がある」と強調。東京に出先機関を持つことの重要性を説明した。来賓として祝辞を述べた日本観光振興協会会長の山口範雄氏、国土交通副大臣の田中良生氏の2氏も、東京に事務所を持つ各自治体などとの連携強化に期待した。