JATA、海旅推進部長に元KNT權田氏、会員の利益確保に邁進
このほど日本旅行業協会(JATA)の海外旅行推進部部長に就任した權田昌一氏は本誌の取材に応え、「前職の重田(俊明)氏が足かけ9年にわたって培った関係者とのパイプを引き継ぎ、会員各社が利益を確保できるよう取り組む」と抱負を語った。2月に政府観光局や航空会社、ランドオペレーターなどと設立する「アウトバウンド促進協議会」については「関係者とこれまでにない密度のネットワークを構築し、新たな商品造成につなげたい」との考えを示し、会員企業の利益確保に焦点を絞った取り組みを進める方針を伝えた。
權田氏は、前年比5.6%増の1711万6200人と4年ぶりに出国者数が増加した2016年については「JATAの各委員会や関係者などによる取り組みに加えて、円高なども後押しした。訪日外客増で航空座席が限られているなかでの増加は喜ばしい」と総括。その上で、オリンピックなど需要喚起につながる大イベントが予定されていない17年については、会長の田川博己氏が「足元を見直し、仕掛ける年に」と方針を打ち出していることなどを踏まえた上で「アウトバウンド促進協議会の設立こそが、その具体的な取り組みの1つ」と語った。
協議会の目標や方向性については「中国やアジア諸国の台頭により落ち込んでいる、日本の海外旅行のプレゼンスを高めたい。日本市場が新たな動きを始めたことを世界に知ってもらい、投資などにつなげることができれば」と説明。政府観光局などの撤退や縮小の動きを食い止める考えを示した。また、「旅行会社だけが商品について考えることには限界がある」と述べ、「まずは関係各者と密度の高いネットワークを構築し、協働するスキームを作りたい」と強調。「出国者数増加の動きを加速させる。海外旅行推進部の目標としてきた出国者数2000万人に向けて、今年は1800万人以上をめざしたい」と意欲を示した。
協議会についてはそのほか、JATAとMOUを締結しているマレーシア・タイ・フランス・オーストラリア・米国の5ヶ国に加えて、テロ事件の影響を受けている欧州各国など、日本人の送客において一定の実績のある国々をターゲットとする考えを説明。韓国・中国・台湾については、すでにそれぞれと個別に活動の枠組みを構築していることから、協議会とは切り離すという。また、航空座席の確保など政策や制度に絡む事案については、同会のVW事業推進特別委員会に任せ、協議会では利益確保に焦点を絞る旨を説明した。設立総会は2月13日頃を予定する。
權田氏はインタビューの最後には、年間出国者数2000万人の早期達成に向けた決意を表明。その一方で「出国者数ばかりを追うのではなく、滞在日数を増やすことなども重要。航空座席が足りなくても滞在日数が増えれば取扱高は増える」と語り、改めて会員企業の収益力の強化に重きを置く考えを示した。「例えば韓国のソウルにだけ2週間滞在するツアーを造ってもいい。そんな旅行会社ならではの商品を造成し、売る力をつけなくては」という。
權田氏は1977年に近畿日本ツーリストに入社。同社の取締役執行役員海外旅行部長や米国のKintetsu International Express社の社長などを務めたのち退社し、昨年9月からJATA海外旅行推進部の副部長、今年1月から部長を務めている。