スマホでの旅行予約は1.5ポイント増に、VRの影響も-JTB総研
▽VRは4割超の旅行意欲を喚起、位置ゲーによる宿泊旅行はゼロ
JTB総研は今回の調査で、スマートフォンと移動や消費の関係についても調査を実施した。今年に入り、個人向けのVR(仮想現実)ヘッドマウントディスプレイが相次いで発売され、実際に移動しなくても未知の場所を体験できるようになったほか、「ポケモンGO」のようなAR(拡張現実)を使用した位置情報ゲームが話題となったことを受けたもの。スマートフォン利用者のうち、種類に関わらずゲームで遊んだことがあると答えた人は全体の57.5%で、このうち位置情報ゲームで遊んでいる人は18.0%だった。
位置情報ゲームで遊んでいると回答した186人を対象に、これまでと比べて行動に変化が現れたか否かを聞いたところ、「通勤路や通学路から外れて寄り道をした」が55.4%、「近所に散歩に出かけるなど歩く距離が伸びた」が36.6%、アイテムなどの入手を目的として「商業施設に滞在するために商品を購入した」が13.4%となるなど、行動や消費に変化が起きていることが明らかとなった。しかし宿泊を含めて「わざわざ遠くまで出かけた」と回答した人は0%で、JTB総研は位置情報ゲームの魅力が「宿泊をともなう旅行を喚起するまでには至っておらず、どのように旅行とつなげられるかは今後の課題」と分析している。
VRについては、魅力的な風景や食の画像を見ることが旅行需要の喚起につながっているか否かを調査。その結果、「映像を見たことで満足し、行かなくてもいいという気持ちになった」が6.0%に留まった一方で、「映像がきっかけで行きたくなり、その場所を実際に訪れた」は19.7%、「映像がきっかけで行きたくなったが、実際には訪れていない」は24.8%となるなど、4割以上の人がVRの映像により旅行意欲を刺激されていることが明らかとなった。
「映像がきっかけで行きたくなり、その場所を実際に訪れた」と回答した人のうち、日帰りで行ける国内旅行した人の割合は63.1%となり、宿泊を伴う距離の国内旅行をした人もほぼ同数の62.2%に上った。海外については、アジアなど近場を旅行した人は17.7%、欧米など遠距離の旅行をした人は14.8%となり、映像が旅行の需要喚起に少なからず影響していることが分かった。
映像を見た手段は、ソーシャルメディアの投稿が45.2%と最も多く、次いで、YouTubeなどに投稿された映像が35.2%と続いた。ソーシャルメディアに投稿された写真を見て訪れたくなった割合は、29歳以下の女性が特に高く、YouTubeなどに投稿された動画は男性と50代・60代の女性が高かったという。
「実際に訪れた」「実際には行っていない」「行かなくてもいいと思った」と回答した人に対し、それぞれどんな映像を見たのか聞いたところ、「実際に訪れた」は「自然風景」が58.1%、「日常生活の風景、街並み」が36.0%、「歴史文化的な建築物」が31.5%などとなった。また、映像を見ただけで満足した割合が高かったのも「自然風景」で59.1%に上り、以下は「日常生活の風景、街並み」が40.3%、「観光体験シーン」が29.9%となった。
「実際に訪れた」が「行かなくてもいい」と思った割合を上回ったのは、「歴史文化的な建造物」「伝統料理、郷土料理」「名物スイーツやB級グルメ」など。一方、「行かなくてもいいと思った」が「実際に訪れた」を上回ったのは「日常生活の風景、街並み」「観光体験シーン」「旅先の変わったもの、面白いもの」などだった。このことについてJTB総研は、旅行する際のモチベーションとして食の存在は大きいこと、映像情報があふれている現代社会では、どのような内容をどのような形で届けるかが重要になることなどを指摘している。