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「トランプ大統領」決定、市場への影響懸念、期待感も

 米国で現地時間11月8日、共和党候補のドナルド・トランプ氏が大統領選の勝利を収めた。トランプ氏は過激な主張や醜聞で注目を集め、最後は民主党候補のヒラリー・クリントン氏に軍配が上がると予想されていたところで、今回の勝利は大逆転とも評されている。トランプ氏の発言は、人種や国籍、宗教など国際観光に深く関わる分野でも物議を醸しており、大統領就任が旅行市場にどのような影響を与えるか注目が高まる。

 インターネット上では、「Trump tourism」といったキーワードで検索するとTTGなどの旅行関連メディアだけでなく、ニューヨーク・ポストやFOX、インディペンデントといった一般メディアも次々に記事を掲載。それらの記事は、ドル安によって米国などへの旅行が割安になる可能性や米国へのビザ免除プログラムが見直される可能性、そして入国管理や空港セキュリティが厳格化される可能性などが論じているものが多い。

 また、いくつかの媒体はトラベルズーの調査を引用。これによると、英国人の回答者のうち5人に1人が「(トランプ氏が大統領に選ばれれば)絶対にアメリカを旅行デスティネーションとして考えない」と答えたことなどを紹介し、100万人以上の英国人が訪米を取りやめる可能性があるという。

 このほか、メラニア夫人の出身国であるスロベニアで観光需要増への期待が高まっているとの報告や、カナダなど第3国では米国を避けた旅行需要の獲得や米国からの移住増加をチャンスと見る論説なども散見される。

 日本市場への影響についていえば、トラベルビジョンが日本時間9日17時にウェブサイト上で公開した、「『トランプ大統領』が日本の旅行業界にもたらす影響」について聞いたワンクリックアンケートに対して10日17時までの間に201件の回答が集まり、最も多かったのは「悪い影響だと思う」が97件で48.3%。次いで「どちらともいえない」が85件で42.3%、「良い影響だと思う」が19件で9.4%という結果となっている。

 時間帯ごとの回答状況は、公開後の3時間、つまり日本でトランプ候補の勝利が広く伝わり始めた時間帯では「悪い影響」が圧倒的に多かったものの、10日午前には「どちらともいえない」が盛り返した。しかし午後に入って再び「悪い影響」が伸びはじめており、業界内の困惑ぶりが感じられる流れとなっている。

 なお、日本旅行業協会(JATA)理事長の志村格氏は10日の定例会見で「分からない、が結論」としつつ、選挙中の言動と大統領就任後の政策は必ずしも一致しないこと、上下両院で共和党が多数派となり共和党的な産業刺激策を期待できる可能性があること、米国の経済成長が実現されれば観光交流も進む可能性があることなどに言及。その上で、「JATAとしては、ブランドUSAや米国旅行業協会、各州の観光協会と引き続き連携していきたい」との考えを語った。