JATA、田川会長が続投、「旅行会社の力」再認識へ
日本旅行業協会(JATA)は6月20日、第60回の定時総会で任期満了に伴う役員の改選をおこない、会長の田川博己氏および副会長3氏の続投を決定した。新たな理事長には新関西国際空港の前常務取締役で、元観光庁次長などを歴任した志村格氏が就任した。任期は2年間。また、2015年度の事業報告および3月に発表した事業基本骨子に基づく16年度の事業計画を承認した。16年度は「海外渡航者人数2000万人に向けた施策推進」や「国内旅行市場の活性化推進、東北復興支援活動の継続」「訪日旅行者2000万人の次のステージに向けた施策推進」など7つのテーマに取り組む。
この日の冒頭で登壇し「会長メッセージ」を読み上げた田川氏は、海外渡航自由化からこれまでの約50年間における旅行会社の取り組みについて振り返り、「企画力・斡旋力・添乗力で市場を開拓してきた」と評価。これらの3つの力が旅行会社の原点との見方を示した上で、今年のJATAの最大の目標である海外旅行の回復に向けては「我々の力の原点を再認識することが必要」と強調した。
OTAや民泊など、ITを活用した新たなサービスが拡大する現在の旅行業界については「脅威でありチャンス」とコメント。「(旅行会社の原点を再認識した)その上で環境の変化に対応し、新たな市場やテクノロジーに前向きに向き合い『価値創造産業』をめざす」と決意を表明した。
田川氏はこれらの技術革新に端を発するテーマについては「新しいものが善で、既存のものが悪という議論になりやすいが、そのような議論には大いに物申し、ルールや制度を作ることが国の発展につながると発信してきた」と主張。「JATAが一目置かれるのは、節目において我々が企画力・斡旋力・添乗力を発揮したから」と述べ、昨年の3000人の大型使節団による中国訪問などの成果について説明した。また、13年には国連世界観光機関(UNWTO)とMOUを締結し、観光庁を側面的に支援してきたこともアピールした。日本は昨年、25年ぶりにUNWTO理事国に就任している。
田川氏は今後も3つの力で「海外旅行の需要創造」「国内の地方創生」「訪日旅行の仕組みづくり」「安全な旅の実現」に注力する考えを示した。このほど明らかになった、ジェイティービー(JTB)と札幌通運への相次ぐサーバー攻撃については「情報化社会に生きる旅行会社として『セキュリティーについてしっかり取り組む』という方針がJATAのなかにも必要」と述べ、「今一度、旅行会社の価値について考える時がきている」と述べた。
そのほか、4月の地震で被災した九州地方については、これまでに正確な情報提供やボランティア活動、義援金の寄付などをおこなってきたことを説明。今後はこのほど全国旅行業協会(ANTA)および日本観光振興協会(日観振)と協働で開始したキャンペーン「旅で応援、いこうよ九州」に注力する旨を語り、「夏休みや秋の行楽シーズンを通じて、我々の腕の見せ所である送客で、観光による復興を成し遂げたい」と意欲を示した。
▽田村長官、九州支援プログラムに協力要請「旅行会社の協力不可欠」
来賓として挨拶した観光庁長官の田村明比古氏は、今年3月末に政府が策定した新たな中長期ビジョン「明日の日本を支える観光ビジョン」について説明。同ビジョンには若者の海外旅行を振興する施策なども盛り込んだことを紹介した上で、旅行会社には「質の高い観光交流の加速に向け、海外・国内・訪日で魅力ある商品の企画開発に尽力いただきたい」と協力を求めた。
今年で3回目となる9月の「ツーリズムEXPOジャパン」については、「ツーウェイツーリズムを促進するととともに、国内観光振興にも資するイベントに全面的に協力する」と明言。世界最大級のイベントとして昨年以上の盛り上がりを期待した。
また、先月末に政府がまとめた「九州の観光復興に向けての総合支援プログラム」では、2016年度補正予算のうち180億円を充てる「九州観光支援のための割引付旅行プラン助成制度」を新設したことも説明。「本制度ではとりわけ旅行会社の協力が不可欠」と強調し協力を求めた。あわせて1月のバス事故を受けたバスツアーの安全確保対策の推進や、情報セキュリティ対策についても、「各位が観光振興に果たす役割や社会的責任の大きさに鑑み、協会を挙げて取り組んでいただくようお願いする」と要望した。