JTB田川氏が講演、地域創生「課題はDMO」-関誘協総会
今年で3年目となるJTB関東交流文化誘致協議会(関誘協)の通常総会がこのほどに開催され、ジェイティービー(JTB)代表取締役会長の田川博己氏が「ツーリズムで地域を元気に ~地方創生と観光振興の現状~」と題した基調講演をおこなった。関誘協は2014年にJTB関東が、埼玉、栃木、群馬、茨城、新潟、山梨の各県への流入人口や周遊客の増加を目的として設立した任意団体。ホテル、航空会社、バス会社、宿泊施設、自治体、観光協会など約220の会社や団体が会員となっている。通常総会には昨年より70名多い約200名が参加した。
田川氏はまず、全世界においてツーリズム産業はGDPと雇用のそれぞれ約10%を占めているが、日本で占める割合はその半分程度に留まっていることを説明。「10年、20年後には同程度にならないと、台頭する東南アジアや中国などに遅れをとってしまう」と危機感を示した。加えて、北東アジアおよび東南アジアへの訪問者数が、30年に4億8000万人まで増加する試算などを示しながら、訪日外国人の誘致に取り組むためには「世界との差を感じ、世界の潮流を見る必要がある」と強調した。
政府が年間の訪日外国人旅行者数を20年に4000万人、30年に6000万人に引き上げる目標を掲げていることについては、インフラ整備などの条件をクリアすれば「あながち難しくはない」と語った。
地方創生と観光振興に向けては「住んでよし、訪れてよしの地域づくり」がキーワードになると強調。「住む人が土地に誇りをもち、地域づくりに参加してこそ、ツーリズムは持続性のある産業になっていく」と説明した。その上で、将来の観光立国を担う若者、特に学生のツーリズム産業への参加が重要課題である旨を示し、「今後は若者の国際化を支援する動きも急務」と主張した。
また、地域の観光を活性化するためには、DMOにより観光地を「経営」することが必要と説明。そのためには、「地域の『コト』や『モノ』の魅力を再発見し、『ヒト』によって伝えるコンテンツが必要」と語った。加えて、コンテンツとコンテンツをつなぐシナリオを作ることで、新しい旅を創造していく必要性を指摘。「魅力的なストーリーがなければ人は動かない。同時に、お金を落としてもらう『地域の稼ぐ力』を引き出すことが、これからの地域ツーリズムに求められている」と強調した。
JTBでは旅行を「文化交流事業」と位置づけ、地域での新たなビジネス拡大をめざしているところ。田川氏は、これまでは旅行者を送り出す「発地」に重きを置きがちだったが、今後は旅行者を受け入れる「着地」との連動が不可欠と説明し、交流人口の拡大による地域の活性化に貢献したい考えを示した。