週間ランキング、1位はWIT、「新しい常識」へ備えを
[総評] 今週1位になったのは、オンラインでの旅行流通に関するイベント「Web in Travel(WIT)Japan & North Asia 2016」についてお伝えした記事でした。考えてみると仕事柄、1日のうちでパソコンやスマートフォンなどに触っている時間が起きているうちの7割くらいになりそうで恐ろしく感じますが、現代を生きる多くの方が大なり小なり似たような生活をされているのではないでしょうか。
旅行会社の飯の種は航空機や列車に乗る、宿に泊まるといった「権利」です。それは物理的に存在するものでなく、要するに文字などで伝達できる「情報」であり、その点においてインターネットと極めて高い親和性を備えます。この十数年の間にインターネットが旅行業界にもたらした変化は今さら指摘するまでもありませんが、AirbnbやUberが短期間で大きく成長したこの数年を振り返るだけでも動きのダイナミックさを感じます。
WITでも野心をもった起業家たちが事業計画を発表したようですが、今の市場を席巻しているOTAが3年後、5年後にも同じ勢力を保っているとは限りません。すでに海外ではAIと人力旅行手配のハイブリッドのようなサービスも始まっているようで、そうした機敏さを知るにつけ日本では民泊の法整備だなんだと議論しているうちに周回遅れを重ねることになりはしないかと不安を覚えます。
もちろん、私はルールを設けることなしに民泊がはびこっていくことを良しとしませんし、同様に海外OTAと日本の旅行会社のイコールフッティングはなんとしても実現して欲しいと願っています。しかし、現実には流通のあり方がインターネットの力で加速度的に変わっていくわけで、それを止めることはもうできないという可能性もきちんと認識し、二正面作戦のようにそちらにも手を打っておかなくてはならないと考えるわけです。
ただ、そうした変化を予測する一方で、自分自身がそうですが「インターネット疲れ」「テクノロジー疲れ」とでもいうべき倦厭が広がる可能性も感じます。
進化は螺旋的に起きるといいますが、これは変化がいかに大きくても永続はせず、どこかで反動が起きるというものです。そしてその際に重要なのは、仮に振り子のように右側に振れていたものが左へと揺り戻すとして、その振り子は元の位置に戻るのではなく一段高い場所に移るという点です。
つまり、旅行流通についていえば反動がおきてもインターネット経由の販売が廃れることはないということです。これはオンライン流通がいわゆる「ニューノーマル」、つまり「新しい常識」となるということであり、未来を見通す前提としなくてはなりません。
先述の周回遅れへの不安も、こういった新常識が人為的にどうこうできるものでないのではなく、所与の条件として受け入れるしかないのではないかという懸念から来ています。そういった意味では、テロがあちこちで発生する「ニューノーマル」や、米国のトランプ氏やフィリピンのドゥテルテ氏のような人物が支持を集める「ニューノーマル」についても真剣に考えていく必要がありそうです。(松本)
▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年06月03日0時~06月10日18時)
第1位
◆今年もWIT開催、OTAの販路や民泊など議論(16/06/05)
第2位
◆JATA、地方発第3国チャーターに期待、個札緩和で(16/06/06)
第3位
◆東京第1種の日本エアービジョンが破産、テロがとどめに(16/06/08)
第4位
◆日本航空、国際線でハラール機内食、使い捨て食器で(16/06/05)
第5位
◆ベトジェット、17年1Qに関空/ハノイ線めざす、成田も視野に(16/06/08)
第6位
◆バニラ、台北発海外路線を計画、年内に就航 (16/06/05)
第7位
◆JATAなど、受注型BtoB約款の説明会開始、初回はほぼ満席(16/06/05)
第8位
◆ユナイテッド、12月に新ビジネスクラス、専用ラウンジも(16/06/07)
第9位
◆ターキッシュ、関空発欧州で特別運賃、往復5.5万円から(16/06/05)
第10位
◆CAPAのLCCサミット開幕、北東アジア市場の成長に期待(16/06/07)
※除外した記事(本来は10位以内にランクイン)
◆週間ランキング、1位はHIS決算、九州支援策もランクイン(16/06/03)