旅行者の健康「業界はもっと関心を」-東医大・濱田教授
海外旅行者などの健康を維持する「渡航医学」のエキスパートで、日本渡航医学会理事長も務める東京医科大学教授の濱田篤郎氏はこのほど本誌の取材に応じ、日本の渡航医学の現況や、旅行業界がとるべき感染症対策などについて語った。濱田氏は「旅行者の健康について、業界はもっと関心を持ってほしい」と述べ、旅行者に対する正確な情報提供への協力を要望。同大学病院の渡航者医療センターが毎月発信している「海外医療通信」などを活用し、旅行者のリスクを未然に防ぐことの重要性を強調した。
日本の渡航医学を取り巻く環境について濱田氏は、日本は海外渡航自由化から50年ほどしか経っていないこともあり、「欧米並みには進んでおらず、一般旅行者の意識も低い」と指摘。感染症などのリスクの高い国を訪れる場合でも、出国前に診療所などを訪れる割合は欧米諸国に比べて非常に少ないことを説明し、「旅行会社は予防のための正確な情報を入手できていても、それをうまく伝えられていないのではないか」との見方を示した。
一昨年のエボラ熱、昨年の中東呼吸器症候群(MERS)、そして現在注目を集めているジカ熱など、感染症が近年、世界各地で大きな問題となっていることについては、日本でも同様の問題が起こりうると指摘。一昨年に国内でデング熱の感染が拡大したケースなども踏まえて、感染症に罹患した可能性のある人には移動を控えてもらうなど、基本的な対応を世間に浸透させて「拡散させない」取り組みも重要であることを強調した。旅行会社については、正しい情報を旅行者に伝える役割を果たすことが、最終的には業界の発展に大きく寄与するとの考えを示し、医療界や行政などとのさらなる連携を期待した。
今後の旅行者の健康維持については「グローバル化が進み、LCCなども増えて人流の拡大が止められない時代だからこそ、渡航医学も浸透しなくてはいけない」と主張。海外旅行者が訪れやすいよう、渡航医学を専門とする「トラベルクリニック」が全国に増えることを希望するとともに、旅行者の健康維持に明るい薬剤師が常駐する「トラベルファーマシー」の登場などにも期待を示した。
また、「旅行は本来、リスクや苦痛を伴うもので、現代においてもその点は変わらない」と述べた上で、健康に関わるリスクについては、その多くを予防することが可能であることを強調。「旅行者の方々には、楽しさの裏に潜むリスクを予め知り、それを回避した上で旅行を楽しんでいただきたい」とメッセージを送った。
※インタビューの詳細は近日掲載予定