奄美大島、DMOで観光客誘致を強化-元ちとせさんも協力

  • 2016年1月28日

(左から)奄美大島観光物産協会の新元一文氏、歌手の元ちとせさんとイメージキャラクターの「みっけ」、同協会の元井庸介さん  奄美大島観光物産協会はこのほど、都内で「奄美大島DMO事業構想記者発表会」を開催し、本格的な観光振興に向けて開始するDMO事業について発表した。国の地方創生上乗せ交付金を利用し、まずはプラットフォームとなるウェブサイト「あまみっけ。」を1月22日に公開。増加する個人旅行者などに向けた情報の発信を一元化するとともに、マーケティングを強化して観光客増をめざす。3月には都内で、同島出身の人気歌手である元ちとせさんなどが出演するイベントも開催する。

奄美大島観光物産協会会長の谷芳成氏  冒頭で挨拶した同協会会長の谷芳成氏は、奄美大島の観光の現状について「これまでは受入体制などが整備できておらず、観光客に満足していただけなかったという悩みがあった」と説明。その上で、今後はDMOが観光マネジメントの舵取りを務めることで「5市町村が連動して、観光客にワンストップのサービスを提供できるようになる」と述べた。DMOの中心的役割を務める同協会については、奄美市の商工観光部が事務局を務めており、官民一体で同島の観光振興に取り組む考え。谷氏は一般の旅行者に向けては「都会とは一味も二味も違う島の暮らしを体験してほしい」と呼びかけた。

 その後は同協会の事務局が、DMOに関するプレゼンテーションを実施。新元一文氏は「行政目線ではなく観光客目線」での情報発信に努める考えを強調し、宿泊施設については小さな民宿なども紹介して、客室数が逼迫する夏期などに対応したい考えを示した。同じくプレゼンテーターを務めた元井庸介氏は「奄美大島の人々はこれまで、観光客に対する興味が乏しかったが、最近では意識も変わりつつある」と説明。「今後はDMO事業に本腰を入れ、農業や漁業などの関連産業からも協力をいただき、ワンストップで自走できる組織を作りたい」と意欲を示した。

 鹿児島県の統計によれば、2014年度の奄美大島への入込客数は、前年比6.3%増となる39万3654人。前年度には奄美群島の日本復帰60周年を祝う記念行事などがあり、その反動による減少も懸念されたが、7月のバニラエア(JW)の成田/奄美線就航や、クルーズ船の寄港増などにより増加した。このうちJWによる半年間の送客数は約2万6000人で、前年からの増加分の2万3294人を上回る。15年度ついても入込客数は増加する見込みだ。

 本誌の取材に対して新元氏は、JWの定期便就航により「それ以前から進んでいた個人旅行化に拍車がかかった」と説明。同島への観光客はかつては団体中心だったものの、現在については「9割近くを個人旅行者が占めるのでは」という。しかし個人旅行者の動向についてはまだまだ把握しきれていないため、「あまみっけ。」で収集したデータをもとに、今後は詳細なターゲット設定などをおこなう予定。鹿児島県などは現在、18年度を目途に「奄美・琉球」の世界自然遺産登録をめざしているが、同年度までに入込客数45万人をめざすという。

▽オリジナル動画で訴求、3月には六本木でイベントも

発表会見では元さんが奄美民謡の代表曲「黒だんど節」を披露。元さんは高校生時代に「奄美民謡大賞」を史上最年少で受賞している  「あまみっけ。」ではアクセス増に向けたコンテンツの1つとして、3月8日に同名の動画作品を公開する予定。奄美大島の特産品の大島紬で作られたテディベアの「みっけ」が主人公となり、同島の各地を旅するもので、記者発表会でのお披露目の際には、同島出身の人気歌手の元ちとせさんが登場して、奄美方言によるナレーションをおこなった。元さんは奄美大島の魅力について「濃厚な自然だけでなく、人々の温かさなどにも触れてほしい」とコメントし、都市圏と同島の人的交流の活性化に向けて、自身も協力する考えを示した。

 同協会は3月9日には、六本木ヒルズに50組100名の一般客を招待して、特別イベントを開催する予定。同イベントでは元さんが奄美民謡を披露するほか、「酒場ライター」として知られる吉田類さんが出演し、黒糖焼酎の魅力について語るトークショーを実施する。応募は2月22日まで同サイトで受け付ける。