週間ランキング、1位は年頭所感、「量より質」への変化

[総評] 明けましておめでとうございます。あまり日並びが良くない年末年始でしたが、皆様はどのように過ごされたでしょうか。旅行や帰省をされた方、家でのんびりされた方、あるいは出勤された方もいらっしゃるでしょう。実際のところは12月31日と1月1日で何かが変わるわけではありませんが、心機一転、新しい気持ちで日々を過ごしていければと思います。

 さて、新年最初のアクセスランキングで1位となった記事は、観光業界トップの年頭所感を集めたものでした。

 2015年は出国者数と訪日外客数が逆転したエポックメイキングな年であり、今回の年頭所感はそれを意識したものとなっています。何らかの事情で外国人旅行者が激減しない限り再逆転はなさそうですし、変化に適応した方針を示すのは当然でしょう。インバウンドは量から質へ、海外旅行は復活へ、というメッセージもまた必然です。

 ただ、一つ残念だったのは、「平和」の重要性を指摘する方が1人もおられなかったことです。少なくともトラベルビジョンで取り上げた団体、会社の中では、経営理念に「平和で心豊かな社会の実現に」という文言があるジェイティービー(JTB)はかろうじて入っていますが、それ以外は皆無です。

 前段で「激減しない限り」と書きましたが、その可能性がないとは誰も断言できないでしょう。パリで観光客が大幅に減ってしまっていることは日本でも報じられていますが、安全が脅かされれば旅行意欲が削がれるのは当たり前です。

 昨年も当欄で述べましたけれども、観光が平和産業であるならば、その当事者たちは率先して平和を希求しなければなりません。収益力の強化も品質の向上も、平和でなければ何の意味もないはずです。なぜこのそうそうたる面々が、平和を願う一文すら盛り込まなかったのか不思議です。

 また今週は、トップ10には入らなかったもののもう一つショックなニュースがあり、クロアチア政府観光局が年末に東京事務所を閉鎖したことをお伝えしました(リンク)。同事務所は2008年の開設で、個人的にもトラベルビジョン入社とほとんど変わらず、日本代表のエドワード・トゥリプコヴィッチ・片山氏にはお世話になってきただけに大変驚きました。

 新年早々に残念なニュースを取り上げてしまいましたが、昨年末にはオーランド観光局日本事務所も閉じており、需要の低迷する海外旅行市場にとって痛手が続いているのは事実です。出国者数の大きな伸びがあまり望めないなかで、いかに海外からの期待をつなぎ留めていくかが課題となります。

 この点について日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己氏は、新春記者会見で日本市場の「プレゼンス」を示す必要性を語られています(リンク)。興味深いのはここでも「量より質」が重要視されていることで、デスティネーションの質と旅行者あるいは市場としての質はまったくの別物ながら、2016年の旅行業界を占うキーワードとなるような予感がします。

 なお、片山氏は日本に留まって両国をつなぐお仕事を続けられるとのことで、ご活躍に大いに期待しております。(松本)

▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2016年1月第2週:1月4日0時~1月8日18時)
第1位
年頭所感(1)訪日旅行は量から質の時代へ、海外旅行の復活も(16/01/05)
年頭所感(2)新たな提案で収益基盤強化、さらなる成長の1年に(16/01/05)

第2位
国内LCC、年末年始の旅客数は全社が増加-新興は3社が伸長(16/01/05)

第3位
新春トップインタビュー:観光庁長官 田村明比古氏(16/01/07)

第4位
エア・カナダ、夏ダイヤで成田/トロント線と関空線再開(16/01/05)

第5位
JTBと日本旅行、北海道新幹線の利用商品発売、3月開業で(16/01/04)

第6位
OTOA、JATAとの関係強化に意欲、「海外旅行復活」へ(16/01/06)

第7位
HIS、16年注目の旅先1位はキューバ、記念ツアー発売も(16/01/04)

第8位
HIS、電力販売の申込受付開始、旅行との同時予約で割引(16/01/06)

第9位
最も安全な航空会社、1位はカンタス-エアラインレイティングス(16/01/07)

第10位
日系2社、年末年始の国際線旅客数は7.1%増、利用率82.7%(16/01/04)