主要旅行会社、パリのツアー再開へ、出張は自粛傾向
パリで先ごろ発生した連続テロ事件を受けて、ツアーの催行中止やキャンセルなどの対応をおこなっていた旅行会社各社は、現地の状況の改善を受けて徐々に通常通りの対応に戻しつつある。パリ観光局によれば、18日の時点で主要な観光地は一部の例外を除き、ほぼ通常通り営業。主要なデパートも通常の営業をおこなっており、地下鉄も一部の路線を除き運行している。また、ランドオペレーターのミキ・ツーリストによれば、交通機関などについては通常よりも多くの警備スタッフが配備され、セキュリティも強化されているという。こうした状況を踏まえ、旅行会社各社は最新情報の入手に務め、安全に配慮しながらツアーの催行を再開した。
ジェイティービー(JTB)では11月17日の日本出発分からフランスへのツアーを再開。25日までに出発してフランスを訪問するツアーについては、取消料なしでキャンセルを受け付ける。ジャルパックも16日出発分からツアーを再開し、25日までは解除権を提供して取消料を免除。近畿日本ツーリスト個人旅行はすでにツアーを再開しており、パリに滞在するツアーについては25日出発分まで取消料なしでキャンセルを受け付ける。ANAセールスは17日からツアーを再開。パリ滞在を含むツアーについては、30日出発分まで解除権を提供し、取消料を免除する。
エイチ・アイ・エス(HIS)は20日出発分まで添乗員付きツアーの催行を中止。そのほかのツアーは実施していたが、消費者に解除権を提供して取消料を免除した。同社では21日からすべてのツアーを実施し、取消料については通常通りの対応とする。阪急交通社も20日まで解除権を提供してツアーを催行。21日から通常通りの対応に戻した。
一方、日本旅行は22日出発分までフランスでの宿泊や観光が含まれるツアーの催行を中止。23日出発分から通常通り催行し、取消料も規定通り収受する。
事件によるツアーのキャンセルや方面の変更などについては、規模は異なるものの各社で見られ、特に解除権を提供している期間はキャンセルが多かったという。さらに、フランスを含まない欧州のツアーにまで影響が広がったと回答した旅行会社もあった。ただし、ヨーロッパ以外も含む海外旅行全体の需要については、大きな影響はなかったという。
一部の旅行会社からは、年末年始のツアーのキャンセルについては「影響はそれほど出ていない」という声があった。一方、すでに取消料が発生していることから「様子見しているところなのかもしれない」との意見が聞かれた。そのほか、以前から円安などにより欧州方面の需要が不調であることや、すでに冬の閑散期に入りつつあることから「想定よりも影響は少ない」とする声も挙がった。
OTA各社の対応状況については、DeNAトラベル、ブッキング・ドットコム・ジャパン、エクスペディア・ジャパンは通常通りの対応を実施。エクスペディアでは特設ページを設け、航空券などのキャンセルや変更などの際には各社のポリシーを確認した上で、再予約をおこなうよう求めている。なお、電話での問い合わせは繋がりにくくなっているため、48時間以内に出発する予定の顧客に限り、連絡するよう呼びかけている。楽天は事件発生直後に、パリ滞在中の旅行者に連絡を取り無事を確認。ウェブサイトでは外務省の海外安全情報の案内を掲示し、注意喚起を促している。
そのほか、Airbnbでは事件発生直後にパリの宿泊者に対して、メールで現地情報の把握に務めるよう促すとともに、宿泊施設の変更などに対応するコールセンターの番号を案内。フライトの延期などで宿泊できなくなった顧客に対しては、ゲストがホストの了解を得た場合はキャンセル料を収受せずに返金しているという。
▽団体や業務渡航にキャンセル、出張自粛の長期化に懸念も
団体旅行については、KNT-CTホールディングス、東武トップツアーズ、阪急交通社では営業担当が企業や学校などの顧客に状況を説明し、顧客の意向を踏まえて対応。キャンセル、催行の延期、方面の変更のいずれの動きが見られるようだ。
業務渡航については、阪急交通社はパリ行きやフランス行きを中心に企業が出張をキャンセルする動きがあることに加え、フランスに限らず海外全般について、不要不急の出張を自粛する動きが出始めている旨を説明。郵船トラベルは、業務渡航はレジャーほどの落ち込みはないものの、徐々に影響が拡大して海外出張全体に影響が広がる懸念があるとした。パリを経由する業務渡航の場合は、経由地を他都市に変更する希望が多いという。