モルディブ、非常事態宣言発令も「観光に影響なし」-1週間で解除
モルディブ特命全権大使のアハメド・カリール氏はこのほど本誌の取材に応え、9月以降の国内情勢の不安定化などにより、11月4日に全土に向けて発令された治安維持のための非常事態宣言が、同国の観光に影響を与えていないことをアピールした。同氏は「発令後も目立った混乱はない。これまでに発生した事件は、旅行者がほとんど訪れない首都のマーレに限られている」と説明。モルディブの玄関口であるイブラヒム・ナシル国際空港はマーレとは別の島にあり、旅行者はマーレを経由せずリゾート島に移動するため「問題が発生していると感じる機会さえなかったのでは」との見方を示した。
同国では今年1月に国防大臣、2月には元大統領がそれぞれ逮捕され、5月のメーデーでは現政権への大規模な抗議行動が発生。9月にはマーレで爆発物が発見されたほか、大統領専用ボートが爆破された事件で副大統領が逮捕されるなど、治安への影響が懸念される事態が続いている。その結果、2008年に成立した現憲法下では初めて、非常事態宣言が発令される異例の事態となった。
ただしカリール氏によれば、現地では外出禁止令は出されておらず、空港の閉鎖や運航便の制限なども報告されていないとのこと。非常事態宣言の効力はあくまでも「デモなどの集団行動を禁止する程度」で、4日以降に野党支持者によるデモが予定されていたため、「国民や外国人の安全を確保した」という。宣言の有効期間も当初は最大で30日間とされていたが、1週間後には早くも解除。あわせて日本の外務省も、11月4日に発出したスポット情報を取り下げている。
同氏は、モルディブ国民のほとんどはイスラム教徒であるものの、一連の事件などはいずれも政治的な理由によるもので、宗教的な背景はないと強調。「モルディブのイスラム教徒は概して穏健で、中東などのように過激派の活動の兆候はない」と語った。
モルディブ政府は非常事態宣言の発令にあわせて、今回の決定が予防的な措置であり、同国の観光業が影響を受けることはない旨を主張する声明を発表。駐日モルディブ大使館も日本旅行業協会(JATA)宛に同様の文書を送付している。カリール氏は「これまでに日本の旅行会社からの問い合わせは1本も入っていない」と説明し、速報値が発表されていない10月以降の日本人訪問者数についても「大幅に減ることはない」との見方を示した。
なお、本誌の取材に応えた現地のリゾートホテルの日本人スタッフは、「他の国のお客様からの予約キャンセルはいくつかあったが、日本人については特に目立った影響はなかった」と回答。ただし、非常事態宣言中はマーレへのオプショナルツアーなどを中止したという。
スリランカ航空(UL)は非常事態宣言の発令中も日本線の運航を通常通りおこない、日本人をモルディブへ送客。「まったくキャンセルが出なかったわけではないが、目立った動きはなかった」という。一方で、上海航空(FM)は週3便で運航中の上海(浦東)/マーレ線を、11月6日から12月6日まで運休すると発表している。