ハワイ、新体制で市場開発に意欲-「ハワイらしさ」核に
ハワイ・ツーリズム・オーソリティ(HTA)のプレジデント兼CEOのジョージ・シゲティ氏と、COO(最高執行責任者)のランディ・バルデモア氏が来日し、記者会見を開催した。5月下旬の就任後、国際マーケットを訪問するのは日本が初めて。両氏はハワイ州観光局(HTJ)と連携し、旅行会社や航空会社など日本のパートナーとともに新企画や革新的な取り組みを推進し、成長をめざす新体制の方針を説明した。
▽新体制の強化点
ハワイへの2014年の年間訪問者数は830万人で、この4年来、過去最高が続いている。また、日本は訪問者数が151万人、消費額は23億9660万円で「国際マーケットで一番大切」(シゲティ氏)な成熟市場だ。新方針は、この状況でのさらなる観光成長を念頭に置いたもの。
その一環として、両氏は従来のレジャーマーケットに力点を置きつつ、新マーケット開発にも取り組むことに言及。特にシゲティ氏は冒頭、「教育、スポーツ、環境保護、医療など、ターゲットを持って推進していく」と具体例を挙げ、MICE強化に繋がるこれらニューツーリズムの取り組みに強い意欲を示した。
なかでも環境保護では、既に州として再生可能エネルギーの推進を強化しており、45年までに州内の電力を100%再生可能エネルギーとする法案が成立。また、16年9月には約8000名が参加する国際自然保護連合(ICUN)の国際会議がハワイで予定されるなど、同分野での世界的な注目が集まるトピックが多いことを紹介した。
また、バルデモア氏は「ハワイは変化の時期に来ている。旅行者構成の変化が速い」と指摘した。シゲティ氏も「新しいスタイルの旅行者が増えている。特に若年層はインターネットで現地の人が行くような場所を調べて訪れる“ニューフロンティア型”の旅行者も増えている」との認識を示し、変化に柔軟に対応しつつ、デジタルマーケティングやテクノロジーを活用する考えを語った。
このほかテクノロジーに関しては、「UberやAirbnbなど、需要に応じて新テクノロジーが出てきている。それによって交通や宿泊のあり方が変わっていくと思う」との見解も披露。この分野の研究をしながら、対応をステークホルダーと協議していく意向だ。
さらに組織体制も強化した。COO職は今回新設したポストで、バルデモア氏は就任後、HTA内はもちろん、外部の組織や企業、地域とのコミュニケーションの強化に取り組んだことを紹介。従来以上にスタッフの責任感や連帯感が醸成されたという。このほか、マーケティングとプロダクト開発を担当するバイス・プレジデント職も新設する予定だ。
▽アクセス引き続き重視、最重要は「ハワイのアイデンティティ」
一方、アクセスについては、成田空港でのプリクリアランス(事前入国検査)の導入による利便性向上に期待を示すとともに、隣島路線の充実にも引き続き力を入れる。既存のレジャーマーケットも好調のロマンスマーケットをはじめ、HTJとともに強化していく方針だ。
こうした活動は、業界内のパートナーから自治体、異業種企業、さらには地域コミュニティまで幅広く連携し、協議の上で決定していくという。その際には、パートナーシップやターゲット、受け入れのキャパシティ、旅行者の満足度など「大きな図で捉えることが大切」(シゲティ氏)とし、バランスを重視することを強調した。
ただし、その核心として最優先するのは“ハワイのアイデンティティ”。「日本の旅行会社を訪問し、スタッフの責任感に感銘を受けた。そうして送っていただく大切なお客様に、どのようなハワイの体験を伝えていくのかを軸に考えていく」(バルデモア氏)という。
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