トップインタビュー:Booking.com日本地区統括の勝瀬博則氏
海外旅行の取込強化
顧客に正確な情報を提供、多様な選択肢アピール
-現地決済では、予約時にキャンセルが多く発生すると思うのですが
勝瀬 お客様が選択する際、お客様が選択する基準となりうる満足を提供できるのか、満足しなかった場合のアフターケアは十分受けられるのかどうかが重要だ。現地決済は宿泊施設にとって不公平に感じる部分もあるかもしれないし、それに順応するかは個々の宿泊施設の判断もあるだろう。ただし、全体的な流れとして、今後の市場はよりカスタマーフレンドリーな方向に動いていくと思う。
例えばアメリカのスーパーでは、返品や返金が可能だ。スイカを買って割って、食べてからまずかったので返品してもらった友人もいる。しかし、アメリカのスーパーは潰れない。お客様を甘やかすということではなく、お客様に選択肢を与え、安心と安全を提供し、そのスーパーを使う理由を与えている。宿泊施設のビジネスの形態はどんどん変化してきており、お客様をいかに大切にし、彼らの満足を大事にするかを重要視する流れができてきている。
また、キャンセルを防ぐためにも、宿泊施設の正しい情報を提供することは大変重要だ。美しい写真と文章で過剰なアピールをしても、実際と異なっていたら、お客様が訪問した段階でキャンセルになってしまう。きちんと正確な情報を伝えてお客様に満足してもらうことがホテルの本質だと思う。
キャンセルと言ってもすべて直前のものではない。例えば欧米のように休暇を半年以上前に考え、ネットショッピングの「カートに入れる」感覚で数ヶ所のホテルを予約する場合もある。最終的に航空券を見て、どこに行くのかを決め、行かないホテルをキャンセルする。こういうキャンセルは直前ではないので影響も少ない。もちろん、直前のキャンセルもあるが、最後の最後まで、悪意を持ってキャンセルしない人は少ない。
-現在は宿泊施設のみの取り扱いですが、航空券などを扱う可能性は
勝瀬 我々は会社のポリシーとして、宿泊以外には手を出さない、という明確なポリシーがある。世界の旅行の市場規模は約140兆円と言われているが、このうち我々の取扱高は9兆円規模で、全体の10%以下。こうしたなか、別業種の鉄道や航空券に行く必要は、現時点ではないと考えている。9割以上の市場が残っており、宿泊の世界のなかでも、我々ができることはまだあるだろう。
航空会社とはパートナーシップを結んでおり、彼らのウェブサイトでBooking.comの宿泊施設を予約できるアフィリエイトサービスを展開している。航空会社のサイトで航空券を予約すると、宿泊施設はいかがですかと、我々のアフィリエイトサイトが出てくる。トランザクションは我々に関係なく、航空会社は航空会社、我々は我々で提供している。パートナーは航空会社や鉄道会社など、世界に8000社以上ある。
いわゆるOTAのなかでも、既存の旅行会社がインターネットを開始した、というOTAと、eコマースの切り口から入ってきたOTAがある。我々はeコマースからで、インターネット上のトランザクションで、そのために必要な物はなにかを考えている。重要なのはインターネット上でお客様にどうやって最適なサービス提供するのかだ。また、全宿泊施設と契約をしているわけではない。今後はいかに施設と契約をして、お客様に選んでいただけるオプションを広げるかというところを優先させていきたいと考えている。