航空局、16年度概算要求は首都圏空港強化など柱に、訪日対応も
国土交通省航空局長の田村明比古氏は8月21日に開催した専門誌会見で、今月末に予定する2016年度予算概算要求について述べ、同局の「大きな柱」として、首都圏空港の機能強化、訪日外国人旅行者の受入環境整備、航空における安全と安心の確保の3つを重点化する考えを示した。今後は予算獲得に向け最終検討を進める。
首都圏空港の機能強化については「東京オリンピックが開催される2020年とその先を見据えて、全国的なネットワーク形成のためにさらなる強化が必要」と強調。同省が現在、専門の会議体を立ち上げて具体的な議論を進めていることをアピールした。そのうち羽田空港については、提示している新飛行ルート案について「既に関係自治体の理解を得ており、現在は地域住民への説明会を開催している」と説明。「20年までに新ルートが実現すれば、地上設備の整備などが必要になる。準備のための予算も盛り込む必要が出てくる」と考えを示した。
安全と安心の確保については、空港施設などの耐震機能やセキュリティ強化、人材確保などを強化したい考えを表明。先ごろ、調布飛行場を離陸した直後の小型機が住宅街に墜落した事故については「安全対策について急ピッチで検討を進めており、今月中には大きな報告をまとめる」と伝えた上で、「羽田とは直接的な関係のない事案であり、(事故の発生要因の)違いを含めて丁寧に説明する」と方針を示した。
訪日外国人旅行者の受入環境整備については、地域活性の観点からも重要との見方を示し、CIQ体制などを拡充したい旨を説明。「海外から地方の空港に直接乗り入れる便も増えており、体制として足りない部分がある」と指摘し、「人員については強化を進めているが、(各空港の)施設の面でも拡充しなくては」と強調した。そのほか、国際線と国内線の接続利便性の向上にも注力する考えを示した。
田村氏は、デルタ航空(DL)がほぼ運休状態にあった羽田/シアトル線を9月末で運休し、深夜早朝の発着枠を返上することについても言及。「それぞれの航空会社で経営上の判断は違うが、羽田の深夜早朝枠は米国西海岸線には充分な利用価値がある」とコメントし、「できれば昼間の枠についても協議が進むよう、水面下で努力を続けたい」と語った。
安全上の懸念により、タイ国籍の航空会社の新規乗り入れなどの認可を保留している問題については「審査体制の強化など、提起されている問題の解決には一定の時間がかかると思う」と説明。拡大する日タイ間の人的交流などに配慮しながら、状況を注視し現在の暫定的な措置を続ける考えを示した。