北陸新幹線が開業、旅行会社もツアー開始-需要取込活発化

  • 2015年3月15日

東京駅に停車中の北陸新幹線車両(写真提供はいずれも日本旅行)
 東日本旅客鉄道(JR東日本)と西日本旅客鉄道(JR西日本)は3月14日、北陸新幹線の運行を開始した。1997年に長野新幹線として開業した東京/長野間に、新たに長野/金沢間を延伸して共同運行するもので、開業に向けた構想が初めて発表されてから半世紀を経てようやく開業が実現した。今後は観光やビジネスを通じた、首都圏/北陸間の交流拡大が期待される。

 北陸新幹線の各便の定員は934名で、最高速度は時速260キロメートル。最速タイプの「かがやき」は東京を出発した後は大宮、長野、富山、金沢に停車し、富山には2時間8分後、金沢には2時間28分後に到着。従来の上越新幹線と特急の乗り継ぎに比べ、所要時間はそれぞれ1時間3分、1時間19分短縮されることになる。「かがやき」は1日に10往復する定期便に加え、6月30日までは臨時便として1日最大8往復を増便。一部は新高岡にも停車する。「かがやき」以外には、長野/金沢間の停車駅が多い「はくたか」、富山/金沢間を走る「つるぎ」、東京/長野間を走る「あさま」がある。

 東京/金沢間の料金は通常期の普通車指定席が1万4120円で、グリーン車が1万8750円。客室乗務員がサービスをおこなう最上級の「グランクラス」は2万6970円となる。これまでは上越新幹線と特急の乗り継ぎに比べて、所要時間の面で優位に立っていた国内航空会社の羽田/富山、小松線については、各社が運賃を引き下げるとともに座席供給量の調整をおこない、1人でも多く利用者をつなぎ止める考えだ。なお、金沢以遠の区間については、2022年度の金沢/敦賀間開業が見込まれており、将来的には新大阪にまで延伸する見通し。

 この日は開業にあわせて、東京や金沢などの各停車駅が記念式典やイベントを開催。旅行会社各社も、既に販売を開始している北陸新幹線利用ツアーの催行を開始した。新幹線の開業に際しては、JTB国内旅行企画が首都圏発着の「ホテル立山に泊まる雪の大谷2日間」、阪急交通社が「北陸3県こだわり大横断3日間」を発売するなど、各社が特集を組むなどしてツアーやプランのラインナップを拡充。楽天は楽天トラベルで「北陸新幹線特集」を開始し、北陸3県と新潟県、長野県、岐阜県の計6県で、宿泊施設約350軒の記念プランを紹介している。

 鉄道旅行に強みを持つ日本旅行は、3月14日には赤い風船で同日出発限定の1泊2日ツアー「400有余年の伝統を今に残す加賀前田家ゆかりの地・高岡2大特別公開と金沢フリータイム」を催行した。往路では東京/新高岡間で「はくたか」を、復路では金沢/東京間で「かがやき」を利用するもので、最大催行人数を20名としていたが、同社によれば2月14日の発売開始から1週間で完売したという。

上越妙高駅で利用者を歓迎する地元の人々 そのほかには「鉄道プロジェクト」で、北陸新幹線と同時に開業する新潟県の上越妙高駅の記念イベントや、走行する新幹線の見学を盛り込んだ1泊2日の「くびき野レールパーク&えちごトキめき鉄道訪問の旅2日間」も催行。同社添乗員によれば参加者からは、速さだけでなく、揺れが少ないことや各席に電源コンセントがあることなど、車内の快適さを評価する声が多く挙がったという。

上越妙高駅では開業を記念して地酒の試飲イベントなどを開催。「くびき野~」の参加者は、上越市から記念のおちょこをプレゼントされ、無料で試飲を楽しんだ 同社は3月7日にTiS金沢支店、14日にはTiS富山支店を、それぞれ駅改札からより近く、利便性の高いロケーションに移転。北陸新幹線開業にあわせて、営業体制の強化を進めている。そのほか、3月10日には京急観光と富山県の第1種旅行業者である日本海ツーリストが業務提携契約を締結するなど、旅行業界内では首都圏/北陸間で拡大する旅行需要の取り込みに向けた活動が、各所で進んでいる。また、新幹線の活用による訪日外国人旅行者の獲得増をめざす計画も各地で進んでおり、北陸新幹線をめぐる動きは今後も活発化する見通しだ。