双方向4000万人へ、今こそ「交流の力」を-JATA経営フォーラム
日本旅行業協会(JATA)会長の田川博己氏は2月18日、東京で開催したJATA経営フォーラム2015の冒頭挨拶で、2014年にアウト/インの双方向交流が3000万人時代に入り、「いよいよ2020年のオリンピックに向けて、4000万人交流時代へのカウントダウンを始める時が来た」とコメント。その上で、中国や韓国との関係改善といった課題に対し「今ほど旅の持つ交流の力が必要とされる時はないのではないか」と語り、旅行会社が役割を果たすことで観光立国、観光大国の実現をめざそうと呼びかけた。
2014年の訪日旅行者数は前年比29.4%増と高い伸びを示し、過去最高の1341万4000人を記録。海外旅行者数は3.3%減の1690万3000人と前年を割り込んだが、合計は3000万人を超えた。
4000万人の達成に向けては海外旅行市場の拡大が不可欠だが、現在は円安や国際紛争、テロなどの影響を受けており、特に「イスラム国のリスクが大きな障害となって」いるところ。これに対して田川氏は、外務省の渡航情報などを活用しリスクを十分に理解した上でツアー催行を判断することに加え、「旅行会社のネットワークを通じて正確な情報を発信」することで、風評被害が発生しないようにすることも旅行会社の使命であると強調した。
また、中国と韓国への旅行需要についても、「観光交流が相互理解の促進となり平和の礎となる」と指摘。JATAとしては、例えば韓国へ12月に1000名超のメガファムツアーを送り2015年の国交正常化50周年に合わせた交流拡大をめざしており、中国についても、3月に現地で役員会を開催するとともに、5月には大型の訪中団を計画。今後もこうした取り組みにより、「私達を取り巻く環境の課題に1つずつ取り組んでいきたい」と意欲的だ。
そして田川氏は、旅行業が観光立国のエンジン役を果たすためには、安定した経営が必要不可欠であるとも指摘。今回の経営フォーラムは、“旅行業が輝く未来へ-これからの旅行業経営を考える-”をテーマに、「旅行業の経営に資するフォーラムという原点に立ち返ったプログラム」を揃えたことを紹介。集まった300名以上の経営者や管理職が多くのものを得て、経営に活かすことに期待を示した。
なお、田川氏に続いて観光庁長官の久保成人氏も挨拶に立ち、2014年に外国人旅行者の消費額が2兆円を突破したことに触れ、「インバウンドが2兆円を超える輸出産業」となり、国土交通省が所管する産業では造船業を超えたことに言及。旅行会社に対しては、今後も訪日旅行者向け旅行商品の造成や質の高いサービスの提供に期待すると語った。
また、海外旅行についても「観光立国の実現には、あくまで双方向の交流が不可欠」であると明言。その上で、海外旅行の振興に向けて「我々も頑張っていく」とし、旅行会社には「旅行業のプロとして、様々なニーズに応える商品造成をお願いする」と要請した。