スイス、鉄道で巡るツアーを提案、FIT強化も-旅行会社に造成呼びかけ

  • 2015年2月2日

(左から)スイス政府観光局アジア・太平洋地区局長のサイモン・ボスハルト氏、日本支局長のファビアン・クレール氏  スイス政府観光局は2015年、鉄道を活用した周遊ツアーを提案する考えだ。昨年10月に日本支局長に就任したファビアン・クレール氏は、同観光局が15年から16年のテーマとしてスイスを周遊する「ツーリング」を設定しており、そのなかでも全世界的なプロモーションとして、車でのドライビングルートと鉄道を活用したルートの2種類をアピールしていると説明。日本市場に対しては、鉄道ルートを中心に展開していく考えを示した。

 クレール氏は、日本の旅行者の場合、スイス国内を車で周遊することはほとんど無いことや「日本人は鉄道が好きで、鉄道を使った商品が適している」ことから、日本市場では鉄道を活用した周遊ツアーを中心にアピールしていくと方針を語った。すでに「Grand Train Tour of Switzerland」として、スイストラベルシステム(STS)などと共にプロジェクトを展開中。シーニックトレインなどを活用した、スイスを周遊する鉄道旅行を提案している。

 また、このほど来日したスイス政府観光局アジア・太平洋地区局長のサイモン・ボスハルト氏は「周遊することで今まで気づかなかった秘境や美しい場所などに注目してほしい」とアピール。さらに、スイスは地方の小さな町への道路や公共交通機関が整備されていることから「FIT層にとっても便利なデスティネーション」であることを強調した。

 同局によると、2014年1月から11月のスイスへの日本人観光客の宿泊総数は前年比10.3%減の43万376泊。日本の出国者数の減少や円安スイスフラン高が響いたと見ており、2014年通年では9.5%減の約44万5000泊を見込む。こうした中、クレール氏は「今までスイスといえばグループだったが、(旅行者数が減少する中)今影響を受けていないのがFITで、それなりに安定をしている」と評価。FITへの取り組みを強化していく姿勢を示した。

 また、クレール氏は旅行会社との関係についても言及。FIT層が増加するなか「我々が展開する新しいテーマや旅程はニッチな層へのアプローチ」とし、「そうしたニッチなアイディアを旅行会社に取り入れていただけるように働きかけていく」とした。今までグループ向けに三大名峰や氷河特急など、パターン化された商品を売れ筋商品として造成してきた旅行会社に対し、新たな商品造成を促すことで需要の掘り起こしをはかる。

 クレール氏は市場のニーズが変化するなか「旅行会社にも変わってもらいたい」と話した。ボスハルト氏も、OTAの台頭により旅行者が気軽に航空券やホテルなどを購入できるようになるなか「昔ながらの手法でビジネスをしている旅行会社は苦しい状況にある。「生き残るためにはニッチな、特別感のあるものを提供していく必要がある」と語った。

 なお、2015年は1月15日にスイス国立銀行が実施した対ユーロ上限維持政策の撤廃によるスイスフランの高騰や、イスラム国による法人拘束事件などで海外旅行需要の先行きが不透明な状況にあるとし、2014年並みの宿泊数を目標とした。