HIS、ラグーナ蒲郡の承継決定、「ラグーナテンボス」が運営へ
エイチ・アイ・エス(HIS)、愛知県、蒲郡市、トヨタ自動車は6月24日に記者会見を開き、複合型マリンリゾート「ラグーナ蒲郡」の3事業をHISが新たに設立した子会社「ラグーナテンボス」に譲渡することを正式に発表した。ラグーナテンボスはテーマパーク「ラグナシア」、ショッピングモール・レストラン「ラグーナフェスティバルマーケット」、及び宿泊施設併設のタラソテラピー施設を譲り受け、8月1日から事業を開始する。これに伴い、蒲郡市は今後10年間、総額30億円の運営事業支援交付金を交付する。
正式な承継は、ラグーナ蒲郡の現運営会社で愛知県、蒲郡市、トヨタ自動車を主要出資者とする第三セクター「蒲郡海洋開発」が7月中旬に開催予定の株主総会で承認を得ることが条件。ラグーナテンボスの資本金は10億4800万円で、事業開始前に帳簿価額11億1200万円相当の株式をハウステンボス(HTB)がHISから譲り受け、出資比率をHTB53%、HIS47%とする。
HIS代表取締役会長の澤田秀雄氏は、今回の事業譲渡について「非常に難しい案件」とコメント。ラグーナ蒲郡はハウステンボスと比べて4分の1と小さく、施設の老朽化にともなうメンテナンスへの設備投資も課題となっている。また、名古屋近郊では設備の整った長島スパーランド、さらに足を伸ばせば大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)や東京のディズニーリゾートといったテーマパークが競合となり、厳しい競争条件にさらされている。
こうした中、ラグーナ蒲郡のどこに勝機があるのか。澤田氏は「欠点は裏返せば長所になる」という点を強調し、そこにビジネスチャンスを見出すという。例えば、ハウステンボスの場合はディズニーランドの1.6倍という広さが費用がかかるというデメリットだったが、その広さを活かして大きなアトラクションを加えたことが奏功した。ラグーナ蒲郡の場合は、面積が狭い分経費がかからない。
また、今まで実施していなかった夜間営業や、夏以外のシーズンの有効活用で来場者数の増加が期待できると見込む。ラグーナテンボス代表取締役社長に就任した巽泰弘氏も、「夏のプールがメインで集客力があるが、年間を通して楽しんでいただけるような施設が必要」だとして、今後はイベントの質、量ともに高め、リピーターの増加に取り組む考えを語った。
さらに澤田氏はハウステンボスが増収増益を毎年続けている点に触れ、「黒字にならない案件には入らない。(HISが)入った年の決算から黒字をめざす」と自信を表明。まずは実質的な初年度となる2015年9月期に来場者数83万7000人、売上高49億円、営業利益1億1000万円、経常利益3億6000万円をめざし、将来的には全国、そしてアジアからも誘客できる施設を目標として展開していく方針だ。
なお、ラグーナテンボスの役員体制は、取締役会長に澤田氏、代表取締役社長に巽氏が就き、常勤取締役として経理財務・人事担当の福間伸一氏、非常勤取締役としてHIS取締役の中谷茂氏、非常勤監査役としてHIS社外監査役の梅田常和氏が就任。
巽氏は1993年10月入社の44歳で、HISの関西営業本部次長、中部営業本部本部長次長、中部営業本部長を歴任した後、2014年4月からはHIS新規事業開発室長を務めている。