現地レポート:イタリア、ベネツィア線就航でアルプス滞在商品の可能性
イタリア・アルプス、コルティナ・ダンペッツォでスローライフ
ベネツィアとの組み合わせでアピール力ある商品に
受け継がれる職人の技、ショッピングにも夢中
穏やかな人々との体験が癒しの時間に
コルティナで体験できるものは、まだまだある。ガラス工房「ピオ・アルベラー」や鍛冶工房「ファッブロ・ツィーノ」など、地域に受け継がれる職人の技の見学や作品作りだ。いずれもコルティナらしい高山植物や動物をモチーフにした伝統的なデザインをベースにモダンな作品もあり、ホテルやレストランのインテリアや食器として目にする機会もある。滞在中に作品を気に入り、土産として日本へ別送する人も珍しくないという。
また、ミシュラン一ツ星のレストラン「ティボリ」では、シェフによる料理教室が体験できる。星付きのレストランの厨房で、店で出すメニューの作り方を実演しながら説明してくれる。素材をいかすシンプルな調理法だが、自分では出せない味に改めて星付きシェフの技に感服する。ちなみにティボリは日本人のツアーがよく利用するという。
そして特に女性が夢中になりそうなのは、ショッピング。銀糸細工「フィリグラーナ」などの伝統工芸品のほか、最近は店主のセンスが光る女性好みの雑貨店が増えてきたという。フェルトのクッションカバーやバッグ、カラフルなルームシューズ、花屋を経営する店主のアレンジが効いたフラワーアートなど、手作りの品も並ぶ。ここでしか手に入らない商品の数々に、ついショッピングの時間が長くなってしまう。
こうした体験で得られるのは、風土や文化への造詣だけではない。そこに暮らす人々と触れ合うことで地域への親近感が深まり、さらに記憶に残る旅となる。人口6000人の小さな町では、店やレストランなどで挨拶を交わし、足を止めて話をする人々の穏やかさも印象的だった。日本での慌しさと異なり、ゆったりと急がない日常の場面に心が和む。
また、現地の日本市場に対する姿勢にも言及したい。年間120万泊の観光客のうち約半数が海外から訪問者だが、日本人は1万1000泊ほど。アジアでは1番だが、メインの欧米市場には遠く及ばない。
しかし、コルティナ観光局では日本語の観光冊子を制作。日本語のメニューや案内を置くレストランやホテルもあり、夏期には日本語の観光案内所もオープンする。今回紹介したプログラムは、日本語現地アシスタントでネイチャーガイドのマヌエラ・コンテさんと各施設が日本向けに作ったもの。視察中もさまざまな提案や質問を投げかけられ、その熱心さがうれしかった。
観光局が日本市場を重視し、誘客の手を休めない。これが地域に良い影響を与えているのは確かだろう。日本市場を歓迎する現地の雰囲気は、何にも代えがたい魅力となる。このムードを大切に、日本からの送客に努めていきたい。
取材:山田紀子