アクセスランキング、羽田発着枠の傾斜配分に注目集まる

[総評] 今週の1位は羽田空港で2014年3月から利用可能となる国際線発着枠の配分が決まり、それに関連する記事に注目が集まりました。配分は、現時点で就航先が決まっている16枠のうち、11枠が全日空(NH)、5枠が日本航空(JL)となったもので、JLへの公的支援が競争環境を歪めているというNHの主張に沿って配慮がなされたといえます。

 傾斜配分の是非については、公的資金が投入されたということもあって、インターネット上でもたくさんの意見が見られ、概ね妥当とする声が多いようです。個人的にはどちらの言い分も理解でき、さらにあまりにも業界への影響が大きいだけに、11と5という比率や、国際線発着枠が恒久的に使用可能である点などを含めて考えをまとめきれずにいるところです。

 最も気になっているのは“どのようにして決まったのか”ということで、航空局による記者レクの詳細は掲載しましたが、なぜ12枠と4枠、あるいは10枠と6枠でなかったのかという点だけでも疑問が残ります。

 非常に簡単に書くと、もともとJLの新規就航は「抑制的に判断」、つまり積極的には認めないことにしていた、そこで新規路線にあたる5路線をNHに配分した、計算してみるとJLが税金の減免で得た効果は2000億円、NHが傾斜配分された枠で今後20年間に得る利益は1200億円であったから一定程度の是正効果があった、ということのようです。

 抑制的に判断という言葉を強調しましたが、それ自体も分かりにくいものながら、最も不思議なのは、もともとそうすることにしていたという根拠として航空局が示した、2012年8月10日発表の「日本航空の企業再生への対応について」という文書にはその文言がないことです。また、例えばこの800億円の差は何なのか、逆に21年目以降も恒久的に使えることについてどう考えれば良いのかということも気になります。

 こうした説明ではJL側が納得できないのも当然でしょう。インターネット上ではJLが是正を求めていることについて、税金を投入された上に税金の支払いも減免されているくせに、という論調が多いようですが、そういった話をするならば公益的な償いの方法を論じるべきという主張も成り立ちます。

 ここまで書いてきたことについて、JL側に立っているように感じられる思われるかもしれませんが、NH側の不公平感も当然です。自分たちは頑張ってきたのに、相手はたった数年で業績がV字回復しさらに税金も、という心境はやるせないものがあります。ルールに則っているから、といわれてもなかなか納得できないでしょう。

 いずれにしても、航空局がどのような回答をするかに注目が集まりますが、JLあるいは航空局から内容が公表されることが望まれます。これで諸々が不透明なまま幕引きがはかられれば、JLの要望自体も論理的な正当性が失われます。また、今後の同様の機会には、今回のような波紋が広がらないようなプロセスで決めていただきたいところです。

 ところで、もう一つ気になるのは、NHが配分を受けた枠をすべて飛ぶのかという点です。NHは前向きな意向を示されていますが、例えばカナダの枠はNHのコードシェアパートナーであるエア・カナダ(AC)も就航に意欲的で、成田を含めるといくらなんでも供給過多になるように思われます。

 とはいえ、飛ばないとなると「使わないのなら…」という議論になるでしょう。成田の便を減らして対応するのかもしれませんが、そうなると今度はスターアライアンスのハブとしての機能を羽田に移せるのかという疑問も生まれます。

 来年の夏ダイヤもほぼ7ヶ月ですが、今後の首都圏発着の国際線がどのようになっていくかが形作られる、大げさにいえば日本の旅行業界を左右する7ヶ月間といえそうです。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2013年9月第5週、10月第1週:9月29日0時~10月4日18時)
第1位
羽田発着枠、記者レク詳報【1】(13/10/03)
羽田発着枠、記者レク詳報【2】(13/10/03)
羽田発着枠、記者レク詳報【3】(13/10/03)
羽田発着枠、記者レク詳報【4】(13/10/03)
羽田発着枠、記者レク詳報【5】(13/10/03)

第2位
羽田、全日空に11便、日本航空5便-JLは「到底承服できない」(13/10/02)

第3位
バニラ・エア、就航は12月20日-運賃決定、制服などデザインも(13/09/30)

第4位
業法など見直し着手-観光庁、旅行産業研究会を初開催(13/09/30)

第5位
カナダ、羽田昼間は1日1便ずつで合意-NHとAC、就航に意欲(13/10/02)
日本/カナダ航空協議、羽田昼間枠が焦点に(13/09/29)

第6位
ルフトハンザ、ロフト25店舗でグッズ販売、11月10日まで(13/10/01)

第7位
キャセイ、増便に意欲、羽田にはラウンジ-日本発も回復傾向(13/09/30)

第8位
KNT個人と個人販売、組織改正-製販一体深化、WEB宿泊強化も(13/09/30)

第9位
中部、新ターミナル延期、仕様の見直しも(13/10/03)

第10位
中国国際航空、冬スケで国際線新設、アジア2路線とホノルル(13/10/01)