2013年海外旅行の減少要因-今、何が起こっているのか JTBFシンポジウム

  • 2013年8月1日

検証4・リピーターの変化

 最後に、黒須氏が影響要因として挙げたのが、海外旅行のリピーターの変化だ。前回の海外旅行に行った時期の調査で、2011年以降は「1年前に行った」という人が大きく増えている。リピーターといえば「年2回以上の高経験値の人」が中心の議論になっていたが、「これまでの理解が通用しなくなっている」と指摘する。

 この数年で増えたリピーターはどういう人か。黒須氏は、海外旅行リピーター層における世帯収入の変化を示し、「階層意識の低い人が増えている」という。具体的には、世帯収入が500万円未満と500万円~700万円の人の伸びが著しく、09年と12年を比較するとほぼ倍に増えている。

 また黒須氏によると、2010年から12年はパスポートの取得率が下がってきており、市場のすそ野が広がっているわけではなかった。黒須氏は「08年以降の円高で、パスポートを取得して動き出した人が主要因になっている可能性がある」と指摘。この客層とは「若年層と年金収入になったシニア」のことで、12年9月以降、20代とシニアが大きく減少している動きに符合する。


今後の見通し:減速は一過性
外的要因の改善で回復期待も、具体的数値は示せず

 黒須氏は一連の検証を終えた上で、「確認したいのは景況感が上向いていること」と強調。「JATAのDI値も、海外旅行は国内旅行が久しぶりにプラスになり、全体で見れば悪い状況ではない」と説明する。特に海外旅行については「特殊要因の影響があるが、リーマンショック前までの何をしても響かなかった海外旅行マーケットとは違う」とし、「市場そのものが失速しているのではなく、旅行に行きたい状況は維持されていると私は見ている」と明るい見通しを示す。

 ただし、懸念点として2012年12月時点から縮小した、航空座席供給の動向をあげる。OAGの最新データによると、第1四半期、第2四半期は若干下回り、この間の需要によっては第3四半期、第4四半期はさらに絞られる予想もできる。3年下期も力強い伸びはハワイだけだという。

 黒須氏は9月以降の推移について、「海外旅行の減速は外的要因の一過性のもの」とし、「前年の反動でプラスに転じるが、極めて鈍い動き」と予想。しかし、2012年末に公言した1900万人の予測値については、修正数値などを示すことはなかった。