2013年海外旅行の減少要因-今、何が起こっているのか JTBFシンポジウム
検証2・地方需要の変化
2012年の出国者数が増加した理由の一つに、「地方市場の伸び」があった。しかし、主要4空港とその他の空港における海外旅行者数の推移をみると、12年5月には前年比40%増超の伸びを見せていたその他の空港の失速が著しい。12年10月にはいずれの空港もマイナスに陥るが、その他の空港は今年2月以降は前年の反動も相まって、大きな減少幅となっている。
その理由の一つに、地方空港は中国・韓国路線が多いことから、特殊要因の影響が強いこともあげられる。しかし黒須氏は関係者のヒヤリングで、「地方に関しても座席が取れないということは聞いていない」とし、特殊要因による需要減少で供給量が絞られ、需給がひっ迫している状況にはなっていないと否定する。
地方空港の出国者数の動向を客層別でみると、性年代別では13年3月から4月はシニア女性の減少幅が他の客層の2倍近く減少している。また、旅行経験値別では12年の高経験層(海外旅行10回以上)の地方発出国者数は300万人以上と伸びており、黒須氏は「この大きく伸びた部分が影響しているのでは」と高経験層の旅行動向の変化を指摘。「まったく行かなくなったのか、年数回の旅行を年1回にしたのか、羽田経由のロングホールへの旅行が増えたのか。状況の理解の仕方によって、打つべき手段が変わってくる」という。
検証3・円安
性年代別の出国率を、2012年9月から12月と13年1月から4月で比べると、全く異なる状況になっている。顕著なのが20代で、9月から12月はプラス推移だったが、1月から4月は減少し、全年代でほぼ同じ程度のマイナスとなった。これについて黒須氏は「どの年代でも同じような幅で減少するのは、9.11やSARSのようなクライシスと同じ状況」と説明。ただし「クライシスのような心理影響が起こっているわけではない」とも付け加える。
幅広く海外渡航を思いとどまらせるものとして挙げるのが「円安」だ。黒須氏は「為替レートは影響するが、過去には円安に振れたことで長期的にマイナスになることはなかった」とするが、「これからは起こるかもしれない。もう起きているかもしれない」と新たな動きを匂わす。
その根拠の一つが、ウォンと円レートとの関係だ。レートの推移と訪韓日本人数の推移はかなりシンクロしており、「丁寧に検証していかなくてはいけないが、近場はロングホールに比べると円レートが影響しやすい」とする。
もう一つ、円安に影響する根拠として、日本人の海外旅行構造の変化を指摘する。休日やレジャーの旅行に限ると、1998年以降は近場への旅行が増えて2004年にロングホールを逆転。中国、韓国、東南アジアへの渡航が増えた。「この2つの要素で、為替レートに影響されなかった日本の海外旅行市場に、これまで類推しなかった動きが起こっている」と黒須氏は推察する。