富裕層旅行、学習体験で満足度向上へ-若手需要の増加も

  • 2013年4月9日

富裕層の旅行、情報提供不足が課題
学習体験で達成感を高め、満足度の向上へ

ラグジュアリー・トラベル・アドバイザーの西口卓雄氏
 世界2位の規模という日本の富裕層市場だが、ラグジュアリー・トラベル・アドバイザーの西口卓雄氏は潜在需要の掘り起こしが必要と指摘する。同氏によると、現在は富裕層に旅行情報の提供が適切になされていないため、潜在需要を逃しているという。

 例えば、日本の富裕層市場で人気があるのはハワイやフランス、イタリアだといわれているが「人気なのではなく、日本人が他の情報を知らないだけ」であり、旅行会社が得意とする地域の情報だけでなく、顧客との信頼関係を構築して多様な情報を具体的に提供し続けていく必要があると説く。西口氏は「旅行商品を売るのではなく、友人のような形で寄り添い、旅行情報を提供していくこと」で新たなデスティネーションへの需要が創出できるとした。

 また、顧客と信頼関係を結ぶためには、顧客の求めるニーズを的確に提供し、満足度を高める必要がある。西口氏は、富裕層は全体的に現地で求める体験を重視する傾向があると分析。特に、旅行先の現地の富裕層と同じような生活がしたいというニーズがあるとし、例えば現地の人しか知らない隠れ家的なレストランに案内したり、地元の富裕層のホームパーティーに招待したりするなど、地域に密着した体験がも喜ばれると話した。

 さらに、旅の中に適度な緊張感と教育的な学びの体験を組み込むと顧客の満足度が高まるという。例えばシルバーシー・クルーズの場合、最初の3日間は日本のコンダクターがバーでの飲み物の頼み方や、パーティーで使える簡単な英会話など学びの要素を提供。その後、顧客が自分でバーに行き、パーティーを楽しめるようになると、達成感が生まれて満足に繋がるという。こうした満足度が旅行会社との信頼関係を強固にし、次回の旅行に繋がる。西口氏は「富裕層は価格を見ない。彼らが見るものは質だけ。高品質なものを提供すればリピーターに、ロイヤルカスタマーになってくれる」と説いた。


ブランディングの確立が重要

他業種とのコラボレーションも

ICM代表取締役の中川節子氏

 ロイヤルカスタマーの造成には、提供する商品のブランディングも重要なポイントの一つ。モデレーターでラグジュアリーブランドのピーアールを手がける岡部氏は、富裕層の旅行者は高級ブランドの顧客層と同じであるとし、ブランディングやロイヤリティの維持が重要とした。

 これに対し、LHW日本支社長の渡部恭士氏は、顧客プログラム「リーダーズクラブ」のメンバー獲得に注力していると説明。現在日本には1500人のメンバーがいるが、今後5年間かけて拡大したいとした。同クラブ会員にはカジノでのイベントやスペシャルディナーなど特別イベントも実施。こうした顧客に対するユニークなサービスを提供することで、他ブランドとの差別化をはかっていく考えだ。

 また、中川氏は他のブランドとのコラボレーションも需要だと指摘する。シルバーシー・クルーズではLHWやルレ・エ・シャトー、30代から40代の富裕層を中心にしたプライベートクラブ「ファウスト」と連携した取り組みを実施。例えばLHWとはそれぞれが主催するパーティーに互の顧客を招待し合うなど連携しており、「自分のところだけでやっていても市場は広がらない。協同する機会は増えている」と今後も継続してコラボレーションしていく考えを示した。