LCCの発展、路線網や安全性など4つの課題-航空政策研究会シンポジウム

  • 2013年2月5日

空港にコスト削減要望、行政の協力求め

GK代表取締役社長の鈴木みゆき氏  LCCが新規就航を検討する上での課題の1つは、国内空港のコストの高さだ。岩片氏は「成長していくためには国内線を含め、さまざまな形でどうローコストを実現していくかが大変重要となる」と述べ、空港コストの削減で運賃を下げ、消費者に還元できるような体制の構築に向け、空港や行政に向けて改めて協力を求めた。

 鈴木氏も「LCCは稼働率をあげることで利益を達成する。そこを考慮して(施設使用料などを)柔軟に設定して欲しい」とした。同氏はゴールドコースト空港の事例を説明。同空港はジェットスター航空(JQ)と長期的なインセンティブ契約を締結しており、JQが一定以上の利用者を誘致すると施設使用料が割安になるといい、事例を踏まえた協力を空港側に求めた。さらに、空港ビルは民営化していても滑走路は国営のままでは交渉する際に手間がかかるとし、空港運営体制の一本化も訴えた。

 こうした要望を受け、国土交通省航空局長の田村明比古氏は「一定の低コスト化をしないと競争の中で対抗できない。LCC各社が自社でできる部分と、我々行政が協力して実現していくべき部分がある」とコメント。「空港周辺や安全に直接かかわらない規制の部分など、環境整備を(LCCと)共同でやっていきたい」と、LCCのサポートをしていく姿勢を示した。


安全面や定時運航への不安、解消に向けた各社の努力

TBパブリッシング『ノジュール』編集長の竹地里加子氏  LCC側から空港コストの課題があがる一方、消費者側からは安全性に対する不安の声や、定時運航率に関する課題が上がっている。

 JTBパブリッシングでアクティブシニア中心の旅行雑誌『ノジュール』の編集長を務める竹地里加子氏によると、「国内旅行では交通にかかるコストが高いため、読者は国内旅行=高いというイメージを持っている」ところ。LCCは交通にかかるコストの削減につながるため、読者へのアンケートではLCCは安価で合理的、企業努力が素晴らしい、という好意的な意見が多く見られたという。

 しかし、一方では「安すぎてかえって不安」「定時運航への不安」「インターネット予約が分かりづらい」「コールセンターに電話が繋がりにくい」といった不満の声もある。竹地氏は、LCCの利用方法や格安運賃の理由、安全面での告知不足を指摘した。

 JWの岩片氏も、消費者は漠然とした不安を持っているとし、「安全は経営基盤と位置づけて重視し、必要な投資も実施しているが、認知が不足している」と言及。今後は認知向上のためのアピールを継続し、利用者から安全であると情報を発信してもらえるようにしたいとした。

 また、鈴木氏は「安全性はもちろんだが、利用者が気にするのは定時制」とし、「オペレーションの信頼性の向上は大きな課題」と述べた。就航時は遅延や欠航が比較的発生したが、ダイヤの微調整やスタッフの訓練などで定時出発率は向上。4月は66%に留まったが、10月は92%まで改善したという。さらに、鈴木氏は、GKの利用者のうち、初めて飛行機に搭乗した乗客は約3割にのぼるといい、初心者目線での疑問点や納得がいかない点を丁寧に説明していくことが重要とした。