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年間ランキング、LCCに高い注目、チャーターや安全管理も

[総評] 2012年もあと4日となり、師走の雰囲気も色濃くなってきました。この原稿では、1年間の振り返りとして2012年に掲載したすべての記事の中で最も多く読まれた記事を100本ご紹介します。

 今年は出国者数が通年で1850万人前後に達する見込みとなるなど海外旅行市場が活況で、尖閣・竹島問題などはあったものの、2009年の新型インフルエンザや2011年の震災など、業界全体を揺るがすような事件、事故は発生せず、久しぶりの穏やかな1年となったように思います。

 このような中でトラベルビジョンは、日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)とトラベルニュース社からご提供いただいているものを含めて約4400本の記事を掲載してきましたが、このうちアクセス数が最も多く集まったのは、スターフライヤー(7G)が自社を「LCC」と定義することをやめた記事でした。

 7Gはもともと「ハイブリッドLCC」として、既存大手航空会社や新興LCCとは異なるビジネスモデルを標榜していましたが、「LCC」という言葉がネガティブなイメージを帯びはじめたことから、目標を「ハイブリッド・エアライン」に変更したものです。

 この記事が1位になった要因は、取りも直さずLCCに対する注目度の高さでしょう。2位もシンガポール航空(SQ)のLCCであるスクート(TZ)の記事で、100位以内に「LCC」の3文字が入る記事は13本もありますし、さらに今年就航した日系LCC3社の記事も15本ランクインしています。

 昨年の年間ランキングでは約40本がLCC関連であったことからすれば本数は減っていますが、本格的な「LCC時代」に突入したという意味で、2012年は大きな区切りの1年となりました。

 2013年の市場環境を予測する上でも、LCCの動向は引き続き重要、というよりむしろさらに重要度は高まります。各社とも急速な事業規模の拡大を計画していますし、例えば春秋航空(9C)グループによる国内線就航なども予定されているところです。

 LCCとの競争が激化すれば、フルサービスキャリア(FSC)から旅行会社への期待も変化する可能性がありますし、逆にLCC側の歩み寄りもすでに見え始めているところです。さらに7Gのように「ハイブリッド・エアライン」をめざす航空会社も出てきており、旅行会社は今後、どの航空会社とどう付き合っていくかを考えていく必要に迫られそうです。

 また、航空関連では、チャーターの話題にも注目が集まっています。まず、結果的に悪い意味での注目になってしまいましたが、13位にはサイパンエアーのニュースが入りました。関連記事でまとめている通り、座席供給量の維持と拡大が悲願であった北マリアナ諸島にとって待望の新路線であり、旅行会社側の反応も良かったようでしたが、結果的には大きなな混乱をもたらしてしまいました。

 サイパンエアーにかぎらず、昨今のチャーターのトラブルは“リスクを取って良い商品を作る”という題目を飛び越えているというか、その“リスク”は本来主に売れ残りの可能性を指すものであるべきながら、現在は飛んでこない可能性まで計算しなければならなくなっています。

 こうした中で、85位にはエイチ・アイ・エス(HIS)によるチャーター専門子会社の設立もランクインしているところですが、航空自由化により航空会社の事業展開にも柔軟性が増す中につれ、FSC、LCC、チャーター、臨時便などすべてを包含した航空仕入れそのものが変化していく可能性が感じられます。

 航空関連ではこのほか、マレブ・ハンガリー航空(MA)とスパンエアー(JK)が運航を停止したニュースもランクインしました。LCCとの競争激化など理由は少なからずあるでしょうが、欧州経済の側面も見逃せません。じわじわと進んできている円安傾向など、需要を左右する経済要因がどのように推移するか、注意深く観察しなければなりません。

 ただ、一方で“座席が増えたから”“円高になったから”といって旅行会社の取り扱いが増え、それらの要因がなくなればいっぺんに不調に陥ってしまうとすれば、ひいき目に見てもいささか情けなく感じます。

 先日、日本旅行業協会(JATA)会長の菊間潤吾氏にお話をお伺いしましたが、「旅行会社ほど自社製品の開発に投資をしていない産業はないのではないか」というご指摘が強く印象に残りました。商品価格の上下のみで優劣が決まるのでなく、商品の魅力やサービスで勝負する価値競争への転換が引き続き求められます。

 その意味では、2012年は旅行会社が提供するべき最も基礎的な価値である“安全”が問われた1年でもありました。つまりツアーバスの事故であり、万里の長城での事故です。万里の長城ツアーを企画実施したアミューズトラベルの旅行業登録の取消処分については、先週の当欄でその妥当性に対する懸念を述べたところですが、その懸念と安全確保の重要性とは別問題です。

 観光庁も、海外の登山やトレッキングのツアーについてガイドライン策定に向けた準備を進めているようですが、できれば登山などに限定せず、あらゆるツアーについて同様の取り組みが進んで欲しいものです。旅行会社に頼んで旅行をすれば安全なんだ、という安心感が広く浸透すれば、それだけで旅行会社の存在意義として十分な役割を果たすはずです。

 さて、当欄は通常、土曜日に掲載しているものですが、今回は金曜日の夕刊でお送りしました。この更新をもって年内のメール配信と通常ニュースの掲載は終了します。今年も多くの方にご愛読いただきましたことを心より感謝申し上げます。新年は1月8日朝刊からの再開を予定しておりますので、引き続きのご愛顧賜れれば幸いです。

 皆様、今年も1年大変お疲れ様でした。良いお年をお迎えいただけるようお祈り申し上げます。(松本)


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