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アクセスランキング、1位はアミューズ、登録取消の妥当性は

[総評] 今週は、万里の長城へのツアーで遭難事故を起こしたアミューズトラベル(アミューズ)に関する記事が1位になりました。経緯としては、事故発生後に観光庁が4回の立入検査を実施していたところ、アミューズが12月20日付の廃業届を12月5日着で関東運輸局に郵送し、これを受けてか観光庁は12月10日に処分の方針を明らかにして、同18日にアミューズ側の申し開きの機会である聴聞を開催しました。

 1位の記事は、この聴聞の場にアミューズが提出した陳述書の内容をお伝えしたものです。翌19日、つまり自主廃業を予定していた20日の前日には登録取消の決定がなされており、今さら陳述書の内容についてあれこれ述べても意味がなさそうではありますが、いろいろと思うところもありましたので書き記しておこうかと思います。

 今回の処分で一番気になる点は、やはり登録取消の処分が法的に妥当であったのかどうかでしょう。言うまでもなく、お客様の命を奪うようなことはあってはならないことですし、それを2度もしてしまった点は動かしようのない事実です。しかし、登録取消の理由は、2度も事故を起こし合計11名の死者を出したから、ではありません。事故の回数と犠牲者の数で処分が下されるのであれば、大手旅行会社でも登録を取り消されるような会社が少なからず出てくるはずです。

 今回は、下見をしていないなど情報収集が不十分である、衛星携帯電話など連絡体制が構築できていない、あるいは“国内の”バスツアーに関して運送引受書を保管していない、といった点を列挙していって、合計の業務停止日数が60日間を超えたために登録取消という判断が下されました。

 アミューズの陳述書は、こうした点について旅行業法に違反したとはいえないと主張するもので、残念だったのは観光庁からその主張に対する回答がなかったことです。行政処分について異議を唱えるつもりはありませんが、どの点がどう旅行業法に違反していたか、ということが明確でなければ、旅行会社としては何に注意をはらい、準備をすれば良いのか分からないわけです。

 例えば、「携帯電話が通じなくなる場所があると分かっていたのに衛星携帯電話を持たせなかった」点が問題視されましたが、アミューズ側の「携帯電話の通じない場所があるのはどの地域、国、観光地でもあり得る。すべて衛星回線を確保しなければならないという法的義務の根拠はない」という主張は理解できるものです。すべてのツアーに衛星携帯電話を持たせなければならないとすれば、他の旅行会社にとっても死活問題になってしまいます。

 これ以外でも、現地と本社が定期的に連絡を取っていなかったという点の法的義務の有無や、「運送引受書の一部の記載漏れが業務停止となる法的根拠を示して欲しい」という要望もありました。下見も、現時点ではその定義自体がはっきりとしていないわけですから、それを根拠に処分するというのもいささか苦しいところです。

 アミューズの主張について、観光庁からは「合理性がない」と判断したとしか回答を得られていませんのでこれ以上のことはわかりませんが、安全確保は“行政処分が嫌だからやる”というレベルのものではないとはいえ、何をすれば法的義務を果たせるという基準はあってしかるべきでしょう。そうでなければ、アミューズトラベルの業務体制で本当に問題のあった部分を業界内で共有できず、従って教訓が生かされることもありません。

 下見の問題については、日本旅行業協会(JATA)などが主体となってツアー登山のガイドラインの見直しを進めているところで、観光庁も「できれば我々からも問題提起してしっかり決めたいと思っている」としており、基準も定まってくると期待できそうです。願わくはガイドライン策定の流れの中で、下見以外の項目についても何かしらの指針が示されて欲しいと思います。(松本)


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(2012年12月第4週:12月16日0時~12月21日17時)
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