2013年の海外旅行は1900万人-12年は1850万人を予想、JTBFシンポ
公益財団法人日本交通公社(JTBF)主任研究員の黒須宏志氏は日本人の海外旅行者数について、2012年は前年比10.8%増の1850万人、2013年は12年予測値より2.7%増の1900万人との見通しを発表した。JTBFが12月12日に開催した第22回海外旅行動向シンポジウムで黒須氏は、「(今年の海外旅行者数の)過去最高は間違いない。ポイントはこの傾向が来年も続くか。9月以降の(中国・韓国との)問題の影響がどう出るか」と述べた上で、今年の市場推移を振り返りつつ、予測の根拠を説明した。
2012年に市場が急速に伸びた理由については「全体の旅行頻度が上がった」と説明。海外旅行市場の6割を占める旅行経験10回以上、平均年2回以上の高頻度層にのみならず、経験値の少ない低頻度層の海外旅行が増えたという。特に「2012年だけかもしれないが、3年に1回行くような人が毎年行くようになった」とし、震災の反動を上回る推移となったとする。
しかし黒須氏は「来年は今年ほどの伸びは期待できない」との認識を示す。特に影響するのは、尖閣・竹島問題だ。今年9月までの過去12ヶ月間の旅行者数は前年を上回る推移だが、影響が大きくなった9月以降は伸びが鈍化。9月単月では10代、20代前半と60代後半以上をのぞき、マイナスに転化した。マインド的にも、中国に「親しみを感じる」人の割合は20%を切り、韓国に対しては韓流が入る以前の1996年レベルまで落ちた(内閣府「外交に関する世論調査」)。今年9月下旬にドイツの調査機関が実施した2013年の日本人の旅行意向調査でも、今後12ヶ月間に実施する海外旅行に対して「増やす」「前年並み」と回答した人は高頻度層が多く、昨年と同じ結果となったが、「減らす」「海外旅行をしない」では「減らす」よりも「しない」回答が昨年よりも増えており、低頻度層の旅行意欲の減退が見られることを指摘する。
一方、GDPと海外旅行者数との相関からは、2013年の出国者数は1920万人の想定も可能だという(実質GDP伸び率0.7%、円レート79円~83円/日本経済研究センター発表)。ただし、日本発の座席供給量は2013年6月までは3.9%増で推移するが、その後は今年ほど伸びない見通しであることや訪日旅行者数を含めた全体の旅客需要のバランスを踏まえ、1900万人に下げた予測とした。
なお、訪日旅客数については2012年は33.6%増の830万人、2013年は8.4%増の900万人と予測。国内旅行は、旅行量は微増、消費単価は微減するとの予想だ。