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アクセスランキング、1位は倒産件数-JATA会長人事も

  • 2012年6月15日

[総評] 今週の1位は、東京商工リサーチ(TSR)による5月の旅行業倒産件数が1位になりました。尋常ではないアクセス数が集まっていますので、外部サイトからの流入が原因と思われますが、4月がゼロ件で5月は小規模のみの4件と、最悪の状況ではないといって良い結果でしょう。

 さて、今週は旅行商談会「オーストラリア・ツーリズム・エクスチェンジ(ATE)2012」に参加するため西オーストラリア州に来ているのですが、こちらは「倒産」という言葉とはまったく縁遠そうな活況の様子です。鉄鉱石など資源関係のビジネスが好調であることは知られている通りで、ガイドの方の話によると鉱山に関わる仕事をすると、1週間で3500豪ドル、日本円で約28万円を得られるそうです。

 鉱山などというと、ユネスコの世界記憶遺産に登録された炭鉱の絵画に示されるような厳しい生活を想像しがちですが、人力のみで掘り出すような時代ではなく、また狭い横穴に潜らなくても済む露天掘りですから、英語を話せて相応の重機を扱えれば仕事にありつけるとの話でした。しかも、12時間の勤務を4日連続でこなすと5日間の休日が与えられるといいます。

 1週間で28万円ということは4週間で約110万円。大学出身の教師よりも給料が高いために教師がストライキを起こしたという話も聞きましたが、経済が好況である国や地域というのはこういうものか、と感じさせられます。

 こうした現実を目の当たりにすると、一つには日本へのインバウンドの可能性を感じますし、一方ではアウトバウンドへの危機感も抱きます。インバウンドについては、他国との競争の中でいかに日本の魅力を訴えていくか、という従前のコンテキストと変わらないものの、アウトバウンドは、日本人旅行者が現地にもたらす経済効果が相対的に低くなれば、それだけ歓迎される可能性も少なくなるという点で大いに危惧すべきでしょう。

 日本の経済成長を旅行会社や旅行業界のみで押し上げることは不可能ですので、我々が考えなければならないのは、経済効果の多寡と歓迎のされ方ではないかと思われます。経済効果は、より現地にとってイールドの高い旅行を販売することであり、当然のことながら歓迎に結びつきます。

 また、デスティネーション全体として見れば経済効果は変わらなくても、例えば今まで日本人旅行者を受け入れたことのないようなアトラクションや観光スポットに送客することも、ミクロ的な視点からすれば現地からの歓迎につながるはずです。

 代わり映えしないツアーを企画催行し、勝負どころは旅行代金がほとんど、という状況が変化しなければ、日本人旅行者は「別に来てくれなくても良い客」、あるいは「放っておいても来てくれる客」になってしまうかもしれません。あるいはそうなる前に、旅行者の完全なFITへのシフトが進む可能性もあります。

 こうした発想が的外れかどうか、ATE会場でお会いする日本の旅行会社や現地サプライヤーの方々にお伺いしていきたいと思っていますが、大きく外れているとは考えられません。

 一例として、ATEのメディア向けプログラムで1つのハイライトは、オーストラリア政府の観光大臣による「インディア2020プラン」についてのブリーフィングです。これまで幾つかの旅行商談会に参加してきましたが、観光行政のトップが各国のメディアの前で1ヶ国のみの話をするというのは異例で、それだけインドや中国など成長市場への期待が大きいということが伝わってきます。

 3位には日本旅行業協会(JATA)会長にワールド航空サービスの菊間潤吾氏が就任した記事が入りました。菊間氏が指摘された旅行業界の「大変厳しい環境」には、上記のような市場間競争も含まれるでしょう。

 菊間氏が話されている通り、「旅行会社離れといった声も聞こえてきている」中で、「旅行会社の存在意義の確立」は最大の課題であり、長い間指摘され続けながら解決できていない非常な難問でもあります。この難問に対して、ご自身で「少し異例」と話された人事であればこそ、菊間氏だからこそのお取り組みが大いに期待されます。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2012年6月第3週:6月8日0時~6月14日18時)
第1位
旅行業倒産、5月は4件、小規模のみ-宿泊業は9件(12/06/10)

第2位
HIS、国内LCC就航で需要拡大期待-店舗でパッケージツアー販売(12/06/10)

第3位
JATA新会長にワールド航空サービスの菊間氏-副会長はJTB田川氏、KNT吉川氏(12/06/14)

第4位
トップインタビュー:ジェットスター(前)、国内線就航に向けた戦略(12/06/12)
トップインタビュー:ジェットスター(後)、グループ展開と他社との差別化(12/06/12)

第5位
エアアジア・ジャパン、A320初号機を公開-運賃は「他社に合わせず」(12/06/11)

第6位
ジェットスター・ジャパン、A320初号機公開-旅行会社と「末永い付き合い」(12/06/12)

第7位
カタール航空、成田線をノンストップ便に、日本路線の便数倍増(12/06/13)

第8位
日系LCC2社比較、国内線用A320機内を写真で公開(12/06/14)

第9位
日本航空、マレーシア航空とコードシェア開始-7月1日から(12/06/11)

第10位
全日空、4月の国際線旅客は4割増-JALとの差縮まる(12/06/10)