アクセスランキング、1位はエアアジアの「5円」

  • 2012年6月1日

[総評] 今週は、エアアジア・ジャパン(JW)のニュースが1位になりました。8月1日の就航に向けて、成田発着の新千歳、福岡、那覇の3路線で1万席を5円で提供するという内容で、JWを含む新興LCC3社が「安さ」を前面に打ち出していますが、5円のインパクトはさすがです。

 以前から、少しくらい安くなったとしても、LCC各社が喧伝するような新規需要開拓は難しいのではないかと感じ、当欄でも述べてきましたが、5円ともなると話は別です。確かに1万席以外は5円でないものの、そのイメージを植え付けることが目的ですから、効果も期待できそうです。

 イメージを植え付けると書きましたが、あの手この手で「格安」のメッセージを出し、イメージを浸透させることがLCCのブランディングの基本です。JWの5円もそうですし、3位に入ったジェットスター・ジャパン(GK)の最低価格保証もそうです。

 一方で、安かろう悪かろうのイメージは避けなければならず、清潔感や若々しさを同時にアピールする必要にも迫られます。エアアジアグループの場合は、CEOのトニー・フェルナンデス氏を筆頭に、元気の良さや楽しさ、やんちゃな印象を特徴としているようで、今回の会見も、取材した記者が「会見であれほど笑ったのは初めて」というほど楽しい雰囲気だったそうです。

 私も昨年の会見でフェルナンデス氏が、エアアジアのコーポレートカラーが赤であることについて「赤にもいろいろあるが」と前置きし、「我々の赤は楽しく、安く、そして一緒に笑いあっていける赤」「全日空の皆さん、これからは赤も好きになってください」と話され、会場が笑いに包まれたことを覚えています。

 ところで、イメージといえば、ちょうど今週スカイマーク(BC)の「サービスコンセプト」なるものがニュースで取り上げられるなど注目を集めています。荷物の収納は自分でしなさい、客室乗務員に丁寧な言葉づかいを求めないで、幼児の泣き声などに関する苦情は受け付けません、そもそも機内での苦情は一切受け付けません、といった内容で、ネット上でも賛否両論あるようです。

 気になる方は「スカイマーク・サービスコンセプト」で検索していただければと思いますが、個人的にはその内容自体はLCCとして間違っていないと感じています。コストを切り詰めて運賃を下げることがLCCのビジネスモデルの根幹であるとすれば、どのようにコストを下げるかは各社が決めることで、その方法が消費者に受け入れられなければそれまでのことです。

 ただ、今回のBCの件については伝え方がまずかったのではないかと思います。同じメッセージを伝えるのでも理解や共感、親しみを得やすい手段はあるわけで、消費者の反発すら予想できる方法をあえて取る必要があったのかどうか疑問です。

 親しみを得るという意味では、フェルナンデス氏のユーモアは一つの好例でしょう。旅行関連に限らず日本企業はユーモアが苦手なようで、報道発表資料などもお固い内容ばかりですが、海外などではクスっと笑わされるものもあります。

 例えばブリティッシュ・エアウェイズ(BA)は、ガトウィック/ラスベガス線就航の発表の際、タイトルに「New High Rolling Route From Gatwick」とつけました。「high rolling」は「(博打に)大金をかける、ぜいたくな、羽振りが良い」といった意味がある俗語だそうで、日本でも高額な賭け金で遊ぶ人をハイローラーといいますが、BAのタイトルは当然ラスベガスに掛けたものでしょう。

 日本人の気質として、こういったユーモアを発揮しにくい傾向は確かにありますし、慣れないことをあえてするべきではありません。しかし、親しみを得る、あるいはLCCであれば安さなど、自社の強みをきちんとイメージとして打ち出すことが必要であることに異論の余地はないでしょう。

 そしてその方法として、少なくとも旅行業界においては、外国資本の入ったJWとGKが外国仕込みのブランディングを発揮し始めており、消費者側がそれに呼応して変化していく可能性があるわけですから、旅行会社としても、従前の方法にとらわれていつの間にか時代遅れになってしまう可能性は忘れてはいけないように思います。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2012年5月第5週、6月第1週:5月26日0時~6月1日16時)
第1位
エアアジア・ジャパン、国内線1万席を片道5円で販売(12/05/30)
エアアジア・ジャパン、成田/札幌を4580円から-8月から国内3路線運航(12/05/30)

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JTB、11年度は営業利益4割増-下期回復、海旅売上は0.2%減に(12/05/27)

第3位
ジェットスター、国内線需要は「VFR」3割か、最低価格保証も(12/05/29)

第4位
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第5位
成田/UAEの発着枠2倍に、羽田就航も-13年夏以降から(12/05/29)

第6位
日本旅行、農業に参入-観光連携のビジネスモデル構築へ(12/05/28)

第7位
JLとBA、独禁法適用除外の許可取得、欧州線で共同事業開始へ(12/05/27)

第8位
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第9位
HIS、業績予想を上方修正-営業利益は9%増の120億円見込む(12/05/28)

第10位
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