アジア市場の展望、グローバル市場の戦略-WTTCより
4月17日に仙台で開催された世界旅行ツーリズム協議会(WTTC)第12回会議のオープニングセッションでは、日本の復興とともにアジアの旅行市場の展望が語られた。セッション2では「アジアマーケットの状況」、セッション3は「世界から見たアジアマーケット」と題して、世界から見たアジアについてツーリズム産業関連のさまざまな企業のトップが意見を交わした。世界のトップはアジアをどのように捉えているのか、多岐にわたった議論をまとめた。
成長するアジア市場
あらゆる調査でアジアの旅行市場の成長が見込まれ、海外旅行の一大ソースマーケットとしての期待は高い。日本の震災は一時的に減少を招いたものの、マクロ的な見方からはアジアは大きな成長を続けると見られている。グーグル、中国国際旅行社(CITS)、シンガポール政府観光局(STB)、VISAインターナショナルなど、セッションに登壇したグローバル企業のアジアを担当する旅行関連企業・団体のトップは、この市場が大きく伸びていく予想に大きな自信を示している。
中国の伸びは目覚ましい。CITSのCEOであるチェン・ロン氏は、中国人による旅行は多くは「観光」がメインと指摘。メディアでは、海外旅行で中国人旅行者が高級車のマセラティを購入するといった行動が取りざたされているが、この動きは「ツーリズム」が浸透していくまでの過程と捉えており、これからは欧米に見られるリゾートでゆっくり時間を過ごすといった「ツーリズム」が徐々に拡大していくとみる。
さらに、中国人旅行者は中国国内の旅行も楽しみはじめており、2011年のCITSの中国国内旅行の取扱額は前年比30%増になった。これにあわせて中国民航総局が中国各地で空港の整備を進めているという。辺境地域にも次々と空港が建設され、ロン氏によると今後10年は中国の国内旅行者は10%増の成長を続けると予想しているほど。この動きにあわせて経済活動にも大きな影響があり、航空機メーカーのボーイングとエアバスがおよそ2日に1機のペースで新機体を中国に納入するほど。エアバスは中国に機体の最終組立工場を置き、中国向けの新機材をハイペースで供給できる体制を整えている。中国の航空会社は多数のパイロットの雇用を開始し、中国国内の各地でホテルの建設ラッシュが続いている。観光業が経済発展で大きな役割を果たしている。
中国をはじめアジアの成長は、アジア各地の観光地にも影響を与えている。VISAの北アジア・ディレクターのデービッド・カーツ氏によると、アジア太平洋地域で発行したカードのうち、38%が東南アジア、35%が日本、韓国、中国の北東アジアで利用されている。そして、東南アジアで利用された38%のうち、北東アジアのカードが35%を占めているほど、北東アジアは東南アジアで消費している。
中国以外のアジアの観光地も、大きなポテンシャルを秘めている。最近の話題は、政府の方針が転換されたミャンマーだ。太平洋アジア観光協会(PATA)のCEOであるマーティン・クレイグ氏は「インフラが整備されていない面はあるが、成長の可能性は大きい」と指摘する。実際、その可能性を見いだし、全日空(NH)はミャンマーへの乗り入れ再開を早々に発表。チャイナエアライン(CI)、シルクエア(MI)、バンコクエアウェイズ(PG)なども、新規就航や増便を計画している。こうした例を引き合いに、アジアはデスティネーション開発の余地が大きいと述べた。