LCCと日豪旅行市場-ジェットスター・ジャパン講演を中心に

  • 2012年4月10日

 2012年は日系LCCの就航や外国LCCの日本路線新規開設など、LCC各社の動きが活発化している。先ごろ開催された日豪ツーリズム学会の第8回研究発表会では、LCCをテーマにジェットスター・ジャパン常務取締役の西尾忠男氏による基調講演を始め、玉川大学経営学部観光経営学科講師の野村尚司氏などが日本のLCCの現状や取り組み、長距離LCC路線に対する考察などを発表した。LCCが活発化するなか、日本の空はどのように変化を遂げていくのか。研究発表会から探っていく。


「低価格」で新規需要創出、LCCは市場の25%に成長

 基調講演では、ジェットスター・ジャパンの西尾氏が同社の取り組みを紹介した。ジェットスター航空(JQ)の乗客のうち、3割は初めて飛行機に乗る消費者であることから、LCCが「3割新たな市場を掘り起こしている」と指摘。新規需要の掘り起こしには「低価格」が最も重要との考えを示した。最低価格保証制度を設けて格安運賃を提供することで、需要の取り込みをはかる考えだ。

 ジェットスター・ジャパンの最低価格保証は、競合他社が同一路線、同一日、同時間帯などの条件で安い運賃を提供している場合、その運賃を10%下回る運賃の提供を保証するというもの。西尾氏は「家電量販店システムのようなもの」と例える。日本に最低価格保証の問い合わせ専用のコールセンターを設置し、対応していく予定だ。

 西村氏は、全世界の航空市場では平均25%がLCCだが、日本ではLCCはまだ3%程度だと現状の認識を示した上で「確実に25%まではのびる。大手から(需要を)取ってくるというよりは、自分たちでマーケットを切り開いていく」と意気込みを示した。例えばオーストラリアでは2001年以降、LCCとしてヴァージン・ブルー(DJ)、JQ、タイガーエアウェイズ(TR)が参入。当初はカンタス航空(QF)とLCCとで「パイの食い合いをするのでは」と懸念されていた。しかし、実際はQFの需要は減少せずむしろ増加しており、LCC就航分による需要の積み上げがなされたことで市場全体がLCC参入以前と比較して2倍以上と大きく拡大する結果となったという。

 西尾氏は安価な運賃の提供により、「今まで旅行しなかった人が旅行するきっかけ作りをしていきたい」と述べた。「日本の国内観光が鈍化するなか、旅行市場を盛り上げるためにはまずは日本人に移動してもらわないと」と述べ、友人や家族の訪問、帰省、短期休暇での利用を促進する考えだ。

 また、訪日外国人への取り組みも実施する。JQグループの予約は同一システムを利用していることを活かし、シンガポールやニュージーランドなどからJQで日本に訪問し、ジェットスター・ジャパンで沖縄や札幌などに移動するといったグループ内での相乗効果をねらう。