TCSA、12年度はみなし労働への対応重視-人材育成強化、高齢者活用も
日本添乗サービス協会(TCSA)は3月22日、第26回通常総会を開催し、2012年度の事業計画と一般公益法人移行に伴う定款の変更案を承認した。12年度の事業計画では、重点項目として宿泊を伴う添乗業務への対応を進めていくほか、人材の育成・確保、高齢化する添乗専門職の活用、変化する添乗現場への取り組みとして添乗業務ガイドラインの見直し、労働者派遣法の改正への対応などに取り組んでいく。
添乗環境整備事業では、長年課題として取り組んでいる宿泊を伴う添乗業務への対応を重視。TCSA専務理事の三橋滋子氏は、日帰り添乗やイベント関係の添乗については実時間管理がされているが、宿泊を伴う国内、海外添乗については「事業場外みなし労働との考えで業務を実施してきている」と改めて課題を指摘。「(阪急トラベルサポートの係争で)最高裁判所の判決がどう出るかによって業界自体が動くことになる」とし、裁判の進行状況を確認しながら課題を整理することで、今後の仕組み作りへと繋げたい考えを示した。
また、コンプライアンスの徹底や会員組織率を高めるための働きかけも進めていく。さらに、障がい者など介護を要する旅行参加者が事前告知なしで現れるケースが多いとし、添乗員の対応について日本旅行業協会(JATA)と共催でセミナーを実施する計画を示した。
▽危機管理能力をもった添乗員の育成へ-高齢化する添乗専門職活用も
12年度は人材育成と人材確保についても引き続き取り組む。TCSA会長の山田隆英氏は、東日本大震災をはじめとした地震や津波、テロや暴動など、旅行の途中にトラブルに巻き込まれるケースもあることから「お客様の安心安全を守るツアーコンダクターの役割は増え、高度な危機管理能力が求められるようになってきた」と指摘。
その上で、協会として優れた添乗員の育成に取り組み、必要とされる人材を安定的に供給することで「エスコーテッドツアーの価値を高め、観光産業の発展に寄与していきたい」考えを示した。eラーニングの活用や旅程管理研修の拡充、地区協議会によるブラッシュアップ研修セミナーの実施など取り組みを進めていく。
また、三橋氏は「若年層の失業率は高いが、添乗員の応募者は少ない」と指摘。協会として添乗員説明会や職業ガイダンスを開催し、人材の募集を強化していく考えだ。
さらに、三橋氏は添乗員の高齢化についても課題としてあげる。TCSAでは2010年から独立行政法人「高齢・障害者雇用支援機構」からの受託事業として添乗サービス業での雇用維持、推進に関する調査研究を実施し、課題を整理してきた。今年1月には高齢化する添乗員の活用の着眼点やメリット、働き方などを示した「添乗サービス業高齢者雇用推進ガイドライン」をまとめており、普及セミナーも実施する予定だ。