大幅なキャンセルなし、安全の再徹底へ気運高まる-座礁事故後クルーズ販売
総トン数11万4147トン、乗客と乗組員を合わせて4000人もが乗り込む大型クルーズ客船「コスタ・コンコルディア」が1月13日、イタリア中部ジリオ島沖で座礁・横転した。25人以上の死者を出し、今もなお数人が行方不明となっている。原因として船長の操船ミスという可能性が指摘されているが、今回の事故は上り調子だったクルーズ業界にブレーキをかけることも危惧される。本日には、インド洋沖で客船のエンジンルーム火災による航行不能のニュースも飛び込んできた。クルーズに対する安全性への注目が高まるなか、どのような影響があるだろうか。業界関係者にコスタ・コンコルディア事故後の対応や販売状況を聞いた。
日本人乗客は無事、その後のキャンセルも最小に
まず、事故による直接的な日本人の被害状況について、簡単ではあるがまとめたい。
事故当時、コスタ・コンコルディアには乗客43名と乗員1名の計44名の日本人が乗り込んでいたが、いずれも無事が確認されている。内訳はオーバーシーズ・トラベル(OTA)取り扱い分が33名、クルーズプラネット取り扱い分が4名で、他7名は個人手配などとみられている。
日本におけるコスタ・クルーズの販売は、OTAとクルーズプラネットの2社がコスタとPSA(Preferred Sales Agent:優先的販売代理店)契約を締結して行なっている。今回は多数の旅行会社にコスタ・クルーズを販売しているOTAに話を聞いた。
OTAでは事故後、「座礁事故について」としたコメントを発表。自社取り扱い分の日本人の無事を知らせるとともに、コスタ・クルーズに対して事故原因の徹底追求および安全対策の強化を求めた。また、コスタ・コンコルディアに代わる代替船およびスケジュール調整などについても早期に告知している。コスタ・コンコルディアが就航していた西地中海クルーズは日本でも人気のあるコースで、OTAの取り扱い分のみで3月出発分までに約300名の予約が入っていたという。
「事故後は安全面についての問い合わせが増加したものの、思ったほどキャンセルにはつながっていない。他の客船での西地中海クルーズに乗船されるお客様も多い」と、OTAクルーズ課ジェネラルマネージャーの久野健吾氏。
社内での打ち合わせや、船上での日本人コーディネーターによる説明会では必然的に安全面についての話が出てくるようになったという。事故を機に、安全に対する再確認の意識はより一層、高まっている。