インバウンド、東アジア主要4市場の動向と対策-JNTO旅行振興フォーラム
台湾:オープンスカイとFITが鍵
香港:リピーターの多様化なニーズに応える魅力
台湾は昨年11月のオープンスカイ締結以降、新規路線開設・増便などで定期便数が3割近く増加した。ここ数年緩やかに進んでいたFIT化が2011年下期は一気に加速したという。
「便数が増え航空券の価格が下がったこと、リピーターのニーズに合ったツアー造成が追いつかず、個人で手配する人が増えたことも影響しているのではないか」と交流協会台北事務所経済部の山田敬也氏は分析する。定期便を活用したモデルルート、新規ツアー造成のニーズは高い。一方で、航空券を旅行会社が買い取るという構造的な問題から、旅行会社は利幅の大きい団体旅行に力を入れる傾向にあり、市場が求めるスケルトン型、個人旅行などの商品が少ない状況になっている。
現在は情報過多となっており、今後は素材をある程度絞った上でオンリーワンとしてピーアールをしていくことが重要だという。また個人旅行増加が続く中、ネットでの丁寧な情報提供が安心感を生み、地道だが確実な需要喚起になると山田氏はアドバイスをする。
台湾と同じく、訪日リピーターが多い香港は、訪日回数が3回から5回という人が最も多く、6回以上の人も3割強に達する。個人旅行も2010年実績でシェアが67.2%と成熟した市場だ。
リピーターが多い為、旅行目的も訪問先も多様化しており、最近はレンタカーで各地を周遊するなど体験型の旅が人気だ。その分、従来の桜、紅葉・雪・温泉等の魅力がやや陳腐化傾向にある。韓国・台湾など他のアジア圏のプロモーションも盛んなことから「上質、最高な日本ブランドを構築し、多様化するニーズに応える新しい魅力を、官民一体で創造することが大切」と香港事務所長の平田真幸氏。「楽しみ尽くせ!新しい日本スタイル」をスローガンにした訪日キャンペーンは今年3月まで実施予定だ。
なお、各国の発表に共通してみられたのは「信頼感がビジネスに直結する文化であり、長期かつ継続的に同じ人が担当することが重要であること」「自治体や企業単体ではなく、モデルルート上の地域が連携してピーアールすることが現地のニーズとして高いこと」、さらに「FacebookをはじめとするSNSは日本以上に進んでおり、今後のピーアールには外せない」という点が語られた。長期的視野のもと、戦略的にアプローチすることが訪日需要回復の要になりそうだ。