長崎/上海航路を契機に訪日中国人市場掘り起こしへ
長崎を日本の新たなゲートウェイに
訪日中国人マーケット拡大へ-官民一体の取り組み
長崎県、インバウンド誘致のための補助金を初めて設置
官民で受け入れ体制整備へ
オーシャン・ローズの就航という大きなチャンスをつかむため、長崎県では各種の取り組みを始めている。9月8日には、長崎上海航路の定着化と航路開設による長崎県内活性化に向けて、官民連携による「長崎上海旅遊ネットワーク」を立上げた。入国管理局とも協力しターミナルやCIQ整備に取り組むターミナル部会、県や九州全体で商店街の受入体制の整備などをおこなう受入れ態勢・誘客対策部会、アウトバウンド送客について取り組むアウトバウンド対策部、緊急時対応をおこなう緊急時対策部の4つの部会からなる。
メンバーは行政、民間、病院など多岐にわたっており、横断的に取り組む考えだ。長崎市内の浜町商店街でも日本でもいち早く銀聯カードに対応し、現在は200店舗で使用できるという。HTBクルーズの本格運航が始まる来年1月までに、300店舗まで拡大させる計画だ。
また、新たな取組みとして自治体や施設に対してインバウンド誘致のための補助金を初めて提供。旅館やホテルでの外国語表記や外国放送の受信、洋式トイレへの改修などの補助金につなげるねらい。施設ごとではなく市や地域ごとに立てた計画を審査して提供するもので、当初予算は1925万円だったが、9月の補正予算で1485万9000円が増額され、あわせて3410万9000円を確保。現時点で実例はまだないものの、旅館やホテルが計画中の整備事業は45施設に及ぶという。
さらに、中村氏が課題として指摘した認知向上では、HTBクルーズのプロモーション活動などについて全面的に協力していく方針。「長崎を九州へとつながる流れの玄関口にしたい」(中村氏)考えもあり、長崎だけでなく九州の他県とも協力していくという。
HTBクルーズが仕掛ける新たなクルーズ
HTBクルーズがコアターゲットとするのは、上海に住む20代女性。インターネットが身近な存在で、情報収集の能力も高く、感受性の強い国際感覚のある「新中国人」と呼ばれる層だ。HTBクルーズ代表取締役の山本宰司氏は、「この層に受ければ、上海人、中国人、日本人問わず全ての層に受けると思っている」との考えで、テーマパーク的要素で若い女性層の取り込みをはかっていく方針。特に“豪華客船”的な要素は一切排除し、若年層に受け入れられる船旅のイメージを確立していくという。
今回の運航も、船内は改装中でエンターテイメントも準備中であるなど試験的な意味合いが強く、中国人参加者からのフィードバックも収集。例えば、30歳前後の参加者からは、「客室自体をキティちゃんルームやワンピースルームにしてみては」「日本のアニメや漫画のキャラクターをモチーフにした客室だったら面白い」といった意見も聞かれた。HTBクルーズ代表取締役の山本氏は、「移動手段自体が旅行であるという原点に戻る」との考えで、こうした意見を踏まえてエンターテイメント性を付加していくものと見られる。