長崎/上海航路を契機に訪日中国人市場掘り起こしへ
長崎を日本の新たなゲートウェイに
訪日中国人マーケット拡大へ-官民一体の取り組み
11月6日、ハウステンボスのグループ会社であるHTBクルーズの旅客船「オーシャンローズ」が、中国人船客を乗せて初めて長崎に到着した。2012年1月からを計画する本格運航により、長崎/上海をつなぐ定期航路が15年ぶりに復活することとなり、訪日中国人旅行者の増加にかかる地元の期待は大きい。エイチ・アイ・エス(HIS)代表取締役会長の澤田秀雄氏が投じる新たな一手を受けて、いかに地域を動かし、訪日中国人市場を活性化するか。長崎県の取り組みを中心に伝える。
内容充実の低価格船「オーシャンローズ」
従来型商品からの脱却で新たな需要創出に期待
オーシャンローズは、全長約193メートルで総トン数は約3万トン。正式な座席数や乗船可能人数が明らかになっていないものの、最大収容人数は1700名で、2012年1月からの定期運航開始をめざしている。長崎/上海間の所要時間は片道約22時間で、飛行機の約1時間30分と比較すると何倍もの時間を要するが、その運賃は燃料費や税金を含めて片道1万円以内を計画。
また、船自体を「ローコストエンターテイメントシップ」と位置づけており、22時間の移動時間をデメリットと捉えるのではなく、船内で人気アーティストのコンサートやキャラクターを活用したイベントなどを開催して楽しんでもらうことで、需要を取り込んでいく戦略だ。
長崎県のシンクタンク「財団法人ながさき地域政策研究所」の試算によると、HTBクルーズ就航で訪日中国人が長崎で消費する金額は、年間利用者10万人の場合は92億円、20万人の場合は170億円にのぼるという。長崎への中国人旅行者数は、2010年までの10年間の平均が2万2000人で、年間10万人であったとしても5倍近い拡大となる。
このため、長崎県の期待は非常に大きい。今回の運航でも、オーシャンローズの就航を訪日中国人市場拡大の足がかりとすることを目的に、中国の旅行会社やメディアなど78名を招聘。長崎県が受け入れた中国人訪日視察団としては過去最大規模という。