日本版LCCの可能性と課題、「空飛ぶ電車」の実現へ

  • 2011年10月24日

会場の様子 ピーチやジェットスター(JQ)の代表者らが登壇し、日本でのLCCのあり方などについて議論した運輸政策研究機構国際問題研究所主催のセミナーとパネルディスカッション。前回は、当日の様子からそもそもLCCとは何か、それによってどのような効果が見込めるのかといった点について紹介した(リンク)。特に効果については、運賃の値下がりとそれによる市場の拡大が期待できるという。今回は、「日本版LCC」が実際にこの効果を実現するために何をしようとしているのか、必要なのはどのようなものかについて伝える。


▽LCCの課題は「差別化」

ジョージ・メイソン大学公共政策学科教授のケネス・バトン氏

 世界の潮流から取り残されたようにLCC不在の状態が続いた日本市場。しかし、今年に入って全日空(NH)系のピーチ・アビエーションとエアアジア・ジャパン、日本航空(JQ)系のジェットスター・ジャパンが設立を発表。スカイマーク(BC)も、成田就航にあたり「これまでも我々はかなり努力して安い運賃を提供してきた」が「根本的な事業スタイルは大手と何ら変わっていなかった」とし、「成田では本格的なLCCのスタイルを採用する」(すべてBC代表取締役社長の西久保愼一氏)と表明。片道980円のバーゲン運賃を設定するなど、潮目が変わりはじめている。

 「LCC文化」のない日本市場で、いかに事業を成功させるか。ジョージ・メイソン大学公共政策学科教授のケネス・バトン氏は、諸外国の先例を挙げ、「多くのLCCが抱えている問題は、(ある市場で)成功すると他のLCCが次々に参入してきて市場が溢れてしまうこと」であると指摘。LCCと一口で言っても多くの会社が参入と事業停止を繰り返しているといい、例えば欧州だけでも2003年から2005年までの間に50社以上のLCCが姿を消したという。

 こうした環境下で生き残るためには、他社との差別化が重要になる。バトン氏は、例えばサウスウェスト航空(WN)はLCCでありながらフルサービスキャリア(FSC)と同様のサービスを提供しているといい、「従来型の航空会社とほとんど変わらない」と指摘。その上で、「LCC自体も進化する。日本やアジア市場について考えれば、LCCがどこまでこういった進化の中に踏み込んでいけるか」が課題であると強調した。