インタビュー:英国政府観光庁ディレクター パトリシア・イエーツ氏
オリンピックで旅行先としての認知向上を期待
本当の効果は開催後-旅行業界との協力不可欠
-日本市場の現状についてのご認識をお聞かせください
イエーツ 日本人訪問者数は、地震があったにもかかわらず、6月までの累計で前年比15%増となりました。私も驚いていますが、旅行業界からは予想以上に早く回復しているとの報告が聞こえています。
この要因を分析すると、一つの可能性としてですが、特に欧州他国と比べて、バリュー・フォー・マネーが高いように思います。私が休暇などで他国に行くと、同じものでもイギリスよりも非常に高価に感じます。ですので、イギリスは比較的に価格優位性を保持していると言って良いのではないでしょうか。
また、ロイヤルウェディングによって、王室の伝統性やウェディングドレスをデザインしたアレクサンダー・マックイーンの現代性など、イギリスの良い部分を思い出していただけた可能性もあると思っています。7月から10月までバッキンガム宮殿でドレスを公開していますが、毎日朝から長蛇の列ができています。
-最後に、日本で“LCC時代”の到来が現実味を帯びてきています。LCCの本場であるイギリスでLCCの登場によって起きた変化についてお教えください
イエーツ LCCのブームのあと、人々は旅行のパターンを変えました。海外旅行は年に1回の贅沢ではなくなり、イギリスだけかもしれませんが、どこに行くかを値段によって決める傾向が強まったように思います。また、1年に1度長い休みをとるよりも、短い旅行でいろいろなデスティネーションに行こうとする人が増えました。観光客を誘致する立場としては、アクセシビリティの向上は重要な変化でした。
LCCは所得の低い層が使うものと勘違いされる方もいらっしゃるかもしれませんが、誰もがLCCを利用しています。キャメロン首相ですらイージージェットで休暇に出かけたほどです。LCCに乗るからと言って旅行中の支出が少ないとは限らず、むしろバジェットトラベラーは切り詰めた旅行費用を、ホテルなどどこか別の部分で集中的に使っているのではないかと思います。
LCCのビジネスモデルからすれば飛行時間が3、4時間の路線が中心になりますから、イギリスに直接的な影響が出る可能性は低いですが、3、4時間圏内の“地域内海外旅行”が身近になることで海外旅行自体が活発化すれば、最終的には私たちのようなロングホールのデスティネーションにもチャンスになると期待しています。
-ありがとうございました