インバウンド、魅力開発と情報発信でリピーター獲得が鍵-じゃらんセミナー
歴史より新しい街に魅力
海外旅行先として日本を選んだ理由は、「観光コンテンツの魅力」が1位にあがった。そのほか長期休暇の時期や滞在期間、料金が合うなど、近隣アジア諸国から条件面で旅行しやすいことがわかる。
訪日旅行の目的は「街歩き(都市散策)」「食」「買い物」など都市型観光が上位を占める。
エリア別にみると北海道は「温泉」と「食」、関東は「買い物」、富士山のある中部は「観光」と「自然観賞」、九州は「街歩き」「温泉」「宿泊施設」だ。
訪日旅行中にもっとも長く滞在した地域における満足度の調査では、「非常に満足」と「やや満足」を加算すると約99%と非常に満足度が高かった。テーマ別では「食」「撮影スポット」「宿泊施設」の満足度が高かった。
総合満足度を市場別にみると、韓国は北海道と九州で満足度が高く、台湾は東北で高い。横山氏は「歴史的な建造物を観光するより、新しく清潔な街がコンパクトにまとまっていて食べたり買い物ができることが評価されている。また、国内旅行の感覚の延長で、写真やビデオで“私”を撮影することを楽しんでいるのが興味深い」と分析する。
総合満足度のランキングをみると1位が福岡、2位が大分、3位が千葉、4位が箱根、5位が北海道。項目別では「グルメ」は1位福岡、2位千葉、3位東京。「宿泊施設」は1位宮城、2位大分、3位北陸。「観光地でのアクティビティ」は1位が東京ディズニーリゾートのある千葉、2位福岡、3位宮城。「撮影スポット」は1位千葉、2位大分、3位横浜となった。
横山氏は「おいしいものを安く味わえるエリア、異国情緒を味わえる街並みを持つエリアが上位にあがっている」とし、「たとえば、ゴールデンルートに続く新たなルートとして、関西から入り九州へ抜けるルートを売り出せるのではないか」と提案した。
また、日本式旅館を体験した旅行者の満足度が高いことから、「団体ツアーではホテルを利用することが多いが、1泊でも日本式旅館を体験することが満足度向上につながるようだ」と横山氏。「観光地でのアクティビティ」で5位に入った四国は、スポーツやアウトドアなど体感型アクティビティの評価が高い。京都は「撮影スポット」で初めて4位に入ったことからも、特定の観光素材をピーアールするより、情緒のある美しい街並みが優位になることを指摘した。
情報発信は次の段階へ
それでは受け地側は何をするべきか。調査によると、訪日後に役立った情報機器としては、日本はWiFiの整備が遅れていることが東アジアで知られていることもあり、ホテルなどに設置されたPCの利用が2割強と高い。情報源としては、外国語対応が遅れていても、持ち込んだガイドブックを活用して旅行している。また、訪日後に入手したフリーペーパーなども約3割が活用している。
「訪日時に希望していたができなかったこと」をフリーコメントで採録したところ、回答は大きく2つに分かれた。ひとつは、「日本人が集まる飲食店」「日本人が買い物をするブティック」「日本人が利用する美容院、スパ」など「日本人のライフスタイルを味わいたい」というコメントが多かった。
もうひとつは、「伝統的なイベント」「日本人の生活を体験できるツアー」「プロ野球のゲーム」など、当日参加できるイベントの参加方法がわからなかったという声が多かった。
「後者に対しては、JRCとしても地域と協力して着地型の情報発信に取り組みたい」と横山氏は話す。
また、「リピートしたくなる日本の魅力」をテーマに3ヶ国6名の座談会を開催した。ここで評価されたのが「言葉を超えたおもてなし」。横山氏は「私見ではあるが、たとえば兼六園のように日本の観光素材が外国人に評価されると、日本人からの評価も非常に高まる傾向がある。この点からもインバウンドの取り込みは重要である」としたうえで、今後の受け入れ整備の展望として「言語や情報機器の整備といった負の解消から、おもてなしなど魅力を開発する時期に移っている」という。
主な取り組みとして「外国人旅行者への調査やワークショップによる、外国人目線での地域の魅力の再構成」と「外国人旅行者にとって魅力のある街歩きをさらに楽しくするための即時性のある着地型情報の発信」を提案。参加者に、地域とともに取り組んでいく意向を呼びかけた。